配当と自社株買いで利益の7割を還元 積極的な株主還元の理由

最後に株主還元に触れておきましょう。山口FGは近年、株主還元に積極的です。

山口FGは先述の中期経営計画において、配当性向の目標を40%程度に設定しました。さらに自社株買いも「柔軟かつ機動的」に行うとしています。中計の初年度(2023年3月期)は配当性向が40%、自社株買いも加味した総還元性向は96%に達しました。2024年3月期は配当性向が38%、総還元性向が77%となっています。

今期(2025年3月期)の1株あたり配当金は17円増配の60円を予想しています。配当性向は39.4%となる見込みです。自社株買いは100億円を上限として公表しており、うち25億円を7月末までに取得しました。自社株買いが上限まで行われた場合、総還元性向は70%程度となる見込みです。

積極的な株主還元を実施する理由について、山口FGは低いPBRが背景にあると説明します。

山口FGのPBRは、多くの銀行株と同様に1倍を下回っています。山口FGは「地方銀行であるか否かは関係なく、東証プライム市場に上場しているとの責務がある」との認識から株主還元を実施していると回答しています(出所:山口FG 会社説明会資料 主な質疑応答(2024年3月期))

PBRの改善策の一つとして山口FGが取り組むのがROEの改善です。山口FGは資本コストを7%程度と認識していますが、足元のROEは7%を下回ります。株主が期待する利益を出せていないことが、株価が評価されない理由だと分析しています。

ROEは分子に純利益、分母に純資産を持つ指標です。そして株主還元は一般に純資産を減少させます。したがって、株主還元はROEを向上させる効果が期待されます。

山口FGは株主還元でROEの向上を図り、PBRの改善を目指します。

【山口FGのPBR】
・株価:1888円(2024年7月末)
・1株あたり純資産:3009円(2024年3月末)
・PBR:0.62倍
※(参考)実績ROE:4.0%(2024年3月期)、予想ROE:5.0%(2025年3月期)

出所:山口FG 決算短信

文/若山卓也(わかやまFPサービス)