東京都心部で需要回復の兆し、23区の平米単価は軒並み上昇

2024年6月の都市圏9県における賃貸物件の平米単価は前年同月比98.4%と微減となった。しかし、東京都に限ると同104.5%と上昇に転じており、都心回帰の動きが顕著になっている。特に23区では105.9%と上昇幅が大きく、荒川区(119.3%)、千代田区(114.2%)、台東区(114.2%)で顕著な上昇が見られた。

出所:株式会社いえらぶGROUP 

 

背景としては、リモートワークの浸透が一巡し、企業が都心部のオフィスに戻る動きが影響していると見られる。実際、都内のオフィス賃料も上昇傾向にあり、大手デベロッパーの森ビルが最高益を発表するなど、都心経済の活況を示すデータも出ている。

福岡県は全物件タイプで賃料上昇、人口増加と経済発展が需要を牽引

一方、福岡県は都市圏9県の中で唯一、全ての物件タイプで平均賃料が前年同月比で上昇(103.9%)した。単身者向け(103.5%)、カップル向け(101.7%)に加え、ファミリータイプ(107.8%)、大型ファミリータイプ(101.4%)も堅調に推移しており、幅広い層で賃貸需要が高まっていることがわかる。

 

出所:株式会社いえらぶGROUP 

 

福岡県は近年、大規模再開発計画「天神ビッグバン」や「グローバル創業・雇用創出特区」といった取り組みによって、国内外から注目を集めている。また、2023年には人口が北海道を上回り全国8位に浮上するなど、人口増加も賃貸需要を押し上げる要因となっている。

都市圏全体では大型ファミリータイプが堅調、その他は減少傾向

都市圏9県全体で見ると、平均賃料は前年同月比96.9%、平米単価は同98.4%と、いずれも減少傾向にある。物件タイプ別に見ても、単身者向け、カップル向け、ファミリータイプは平均賃料、平米単価ともに減少している。

出所:株式会社いえらぶGROUP 

 

一方、都市圏9件の大型ファミリータイプは平均賃料が102.3%、平米単価が101.9%と、前年同月比で上昇した。これは、ファミリー世帯においても、より広い居住空間を求めるニーズが高まっている可能性を示唆している。

今後の展望

今回の調査結果から、東京都心部では賃貸需要の回復傾向が見られるものの、その他地域では依然として落ち着きが続いていることがわかった。福岡県のように、経済発展や人口増加を背景に賃貸需要が堅調な地域もある一方、全体としては、コロナ禍の影響を引きずる状況が続いていると言えるだろう。

今後、賃貸市場がどのように推移していくのか、引き続き注視していく必要がある。

■調査概要

調査期間:2023年6月1日~2023年6月30日、2024年6月1日~2024年6月30日

調査機関:株式会社いえらぶGROUP

調査対象:「いえらぶBB」に掲載された物件データ

有効サンプル数:2023年6月期12万件、2024年6月期13万件

調査手法:「いえらぶBB」の掲載データよりランダムに抽出し集計