企業型DCは中退共よりも手続きが複雑

企業型DCは60歳以上で企業を退職し、その時点で10年以上の通算加入者等期間※1があれば、受け取ることができます。では、60歳未満で退職した場合は、どうすればいいでしょうか? 転職先の企業に企業型DCがあれば企業型DCに移し、なければ個人型DC(iDeCo)に移す手続き(「移換」といいます)が必要です。

移換手続きを一定期間内に行わなかった場合は、国民年金基金連合会への「自動移換」となります。この自動移換は、「塩漬けの企業年金」等の見出しで報道されることのあるものです。その理由は自動移換に多くのデメリットがあるためです。

・自動移換のデメリット
①国民年金基金連合会で現金預かりとなり、運用できない(利息等もつかない)
②自動移換の状態の間は通算加入者等期間に算入されない
③毎月の管理手数料(52円/月)がかかる(自動移換後4カ月目から発生)
④自動移換の際の手数料が4,348円かかる
⑤自動移換の状態から戻す時に1,100円+α(移換先によって異なる)がかかる
 

デメリットを一つずつ確認してみましょう。

①DCは運用益非課税も魅力の一つ。現金預かりのままでは、この税制優遇を生かすことができません。

②60歳までに10年以上の通算加入者等期間がないと、60歳から受給することができません。

たとえば42~47歳までA社の企業型DCの加入者だった人が自動移換になり、その後、57歳でB社の企業型DCの加入者になった場合、B社の企業型DCの加入者期間だけでは64歳までは受け取りができません※2。B社の加入者期間にA社の期間を足しても10年には届かないため、60歳から受け取ることはできないのです。仮に自動移換にならず、47~57歳までの間、iDeCoの運用指図者※3(もしくは加入者)であれば60歳から受け取ることが可能になります。

③自動移換の期間が長くなると、負担する手数料も増えます。また、iDeCoの運用指図者手数料は66円/月のため、自動移換のデメリットを回避するために14円/月の負担をしたほうがよいのではないでしょうか(手数料は野村のiDeCoの場合)。

④⑤自動移換になると必ず発生する手数料です。自動移換となった資産を受け取るためには、必ずiDeCo等に資産を移してからでなければ、受け取り手続きを進めることができないためです。

※1 通算加入者等期間とは60歳までの以下の期間のこと。企業型DCの加入者・運用指図者期間、iDeCoの加入者・運用指図者期間、企業型DCやiDeCoにDB等の資産を移換した場合はその加入者であった期間
※2 通算加入者等期間が60歳時点で10年以上あれば60歳以後に受給できるが、10年に満たない場合は加入年数に応じて受給開始可能時期が先延ばしされる。この場合、B社の企業型DCの加入者期間は57歳から2年以上4年未満となり、64歳から受給開始可能となる
※3 掛金拠出はせず年金資産の運用指図のみを行う者