インフレ時代の投資戦略② 短期トレードではなく長期ポートフォリオの構築

さらにこれも2023年の相場が教えてくれるところなのですが、いったん上昇トレンドに入った日本株は、かつてのように簡単には下がりません。もちろん、いつでも上がり続けるというわけではないのですが、かつてのように10%や20 %といった大きな下落を待って短期トレードで儲けてきた人々には、チャンスの絶対量が減ってしまう可能性があります。

悲しいことに、多くの日本人はここで重要な鍵を持つ〝長期ポートフォリオ〟(本来は資産の組み合わせを意味しますが、ここでは複数の銘柄の組み合わせと理解してください)というものを実際に構築したことがありません。デフレの時代が続くなかで、ほとんどの企業が長期的な成長の絵を描けなかったのですから仕方のない話です。

経験のないことは、先輩たちに倣うのが手っ取り早いやり方です。おこがましい話かもしれませんが、投資の神様と呼ばれる〝ウォーレン・バフェット〟が率いるバークシャー・ハサウェイという保険会社などは、毎四半期ごとに保有する銘柄を公開してくれます。それを真似して買うのも悪くはないのですが、ここで注目してもらいたいのは、いったん投資した企業をどれも、彼は長く保有している点です。

ポートフォリオ戦略の基本は、〝持ち続ける〟ということにありますから、デフレの時代のように短期間で保有銘柄をぐるぐると回転させることはポートフォリオ戦略としては得策ではありません(もちろん、回転させることでリスク管理をしている人も実際にいますから、そのやり方を否定するわけではありません)。インフレの時代に入り、名目価値が右肩上がりで上がっていくトレンドに入ったのですから、売ったり買ったりを繰り返すよりも、持ち続けたほうが原理的には有利のはずです(さりとて何があっても持ち続けるというのも理不尽な話なので、常識的には年間に50%程度までの回転が平均的なポートフォリオといわれています)。

●第4回は【投資家から脚光を浴びる尺度は“資産”。見つかりやすくなったイノベーション銘柄の選び方】です。(8月8日に配信予定)。

野生の経済学で読み解く 投資の最適解

 

著書 岡崎良介
出版社 日本実業出版社
定価 1,870円(税込)