◆千葉銀では高配当、広銀では分散投資の商品に強いニーズ

一方、千葉銀行の売れ筋トップの「日経平均高配当利回り株ファンド」は、日経平均株価の採用225銘柄のうち、予想配当利回りの上位30銘柄を抽出してポートフォリオを構築するというもので、運用会社の調査力等によって特定の銘柄を厳選するような運用とは異なる。ファンドの狙いも、株価の値上がり益だけに期待するのではなく、株式を保有することによって得られる配当も狙っていこうという運用だ。

広島銀行の売れ筋トップの「世界経済インデックスファンド」は、株式と債券の投資比率を50対50の均等とし、かつ、世界のGDPの比率に応じて国内・先進国・新興国と資産を配分する。資産配分は基本的には代表的なインデックスを使って行うため、実質的な投資対象銘柄は数千銘柄に分散することになる。資産を安定的に成長させることを目的としたファンドだ。

このように、地銀によって売れ筋の中核になっているファンドの性格が大きく異なっている。良い悪いということではなく、その時々のその地域の顧客ニーズや投信販売に関する考え方が反映された結果ということだろう。それぞれの地銀が「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」という顧客第一主義の考えに基づいて最善の提案を行った結果だろう。

◆欧米の高金利を活かした投資戦略も

また、広島銀行で売れ筋の第2位に入った「2050年満期米国国債ファンド(年4回分配型)『2050米国債』」は6月28日に新規設定された新しいファンドで、2050年に満期を迎える米国債を中心に投資するファンドだ。組み入れるのは2020年のコロナショック時に発行された低クーポン(表面利率)の米国国債で、その後、米国の政策金利が急速に引き上げられたことで、国債価格が急落したものばかりだ。実際にファンド設定後に発表された組み入れ銘柄の情報によると、投資した米国債のクーポンは1.25%~2.00%と低いものの、市場価格が50ドル程度とほぼ半額になっているため、2050年の償還まで保有すれば、最終利回りで4.7%程度のリターンが見込まれる。今後は米国金利も緩やかに低下していくことが考えられ、国債市場がこれ以上に大崩れする懸念も小さいといえるだけに、長期に安定的な収益が期待できるファンドになっている。

千葉銀行の売れ筋第2位の「フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Dコース(為替ヘッジなし)(愛称:悠々債券)」は、世界の債券に戦略的に投資するファンドだ。国債だけでなく、ハイ・イールド債券、エマージング債券にも投資して利回りと値上がり益の両方を狙う。5月末現在のポートフォリオの最終利回りは6.1%、直接利回りも5.1%になっている。今後、欧米など主要国で金利が緩やかに低下していくと見込まれる中にあって魅力的な利回りを確保している。

現在の世界の金融市場の環境を考えると、欧州は既に利下げに転じ、米国も現在の物価水準が続くのであれば9月から利下げに動くと考えられている。突発的にインフレを助長するような事態が起こらないことを前提にすれば、欧米の中央銀行が金利引き下げに動く前に現在の高い金利で債券を保有していることはメリットがあるといえるだろう。

◆成長株か高利回り債券か。二者択一か、両方を狙うのか?

もちろん、債券の安定利回りを獲得するために資金を投資すれば、米国のテクノロジー株式や半導体株式、あるいは、インド株式の大きな値上がりのチャンスを見逃すことにもなりかねない。どちらを選ぶか、または、両方に投資するのか。そのあたりの判断が難しい局面にもなってきている。

執筆/ライター・記者 徳永 浩