◆「米国成長株投信」一人勝ちに潜む危うさ

6月の売れ筋ランキングを見る限りでは「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」の一人勝ちになっている。毎月決算型で新NISAの対象から外れている「Dコース」がダントツの第1位となり、年2回決算で新NISA成長投資枠対象ファンドになっている「Bコース」が前月の第位から第3位にランクを上げた。半面で、キャピタルの「キャピタル世界株式ファンド」、フィデリティの「テンバガー・ハンター」、インベスコの「世界のベスト」といった名だたる運用会社の旗艦ファンドが順位を落としている。

これら旗艦ファンドのパフォーマンスを「米国成長株投信」と比較すると、6月末時点での過去1年間のトータルリターンで「米国成長株投信」が46.7%に対し、「キャピタル世界株式」が32.0%、「テンバガー・ハンター」が28.1%、「世界のベスト」が31.3%という結果だった。このパフォーマンスの差は、「米国株」に特化して投資しているのか、あるいは、米国以外の地域の株式にも投資しているのかという違いによる。「米国成長株投信」のように米国株のみを投資対象としたファンドの方が高いパフォーマンスを出している。

このような、投資対象を絞り込んだファンドが人気を強くしているのが6月の特徴だ。新興国株の中では「インド株」に特化したファンドが選好され、産業別では「半導体」ということになる。当然、このように特化型のファンドに人気が集中するのは、そのパフォーマンスの高さが群を抜いているからだ。たとえば、「インド株」であれば、「HSBCインド・インフラ株式オープン」は過去1年間のトータルリターンが76.0%であり、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は同103.1%という成績をたたき出している。非常にわかりやすく、運用成績の良いファンドに人気が集中している。

しかし、投資対象を値上がり期待の強い分野に集中特化した運用戦略は、市場の変動期に弱い。米国株が崩れたら「米国成長株投信」のパフォーマンスは劣化することは間違いなく、また、半導体関連ファンドは業界をリードするエヌビディアの業績が市場の予想を下回れば途端に株価下落に見舞われよう。現在、世界の株式市場は、米国の金融政策の変化(利下げ開始)のタイミングを見極めようとし、ヨーロッパでの議会選挙、そして、米国の大統領選挙の結果によって現れる変化をリスクとして意識している。本来は、大きな変化の前にはリスク分散が基本的な動作とされるが、6月は集中投資に向かっている。結果的に足元は、米国株価は史上最高値を更新し、インド株高、半導体株高となって投資家の選択は報われているが、その勢いはどこまで続くのだろうか?

◆機を見るに敏、市場最高値に先んじ日本株ファンドがランクアップ

一方、前月の第15位から第8位に順位を上げた「ストック インデックスファンド225」、そして、同じく第17位から第8位に上がった「新光日本インカム株式ファンド(3カ月決算型)」など、日本株ファンドのランクアップに機を見るに敏な、証券会社の顧客の勘の良さが感じられる。7月に入ってTOPIX(東証株価指数)は34年半ぶりに史上最高値を更新し、日経平均株価も3月の高値を更新する上昇になった。日本の株価が新しいステージに入っていくことを見越したかのように、6月の間に日本株ファンドに資金の矛先が向かったのは、大手証券の投資家が市場の変化に慣れている様子がわかる。

執筆/ライター・記者 徳永 浩