GPIFが5日に発表した2023年度運用収益は、前の年度から45兆円のプラスと過去最高を更新しました。収益率はプラス23%で、20年度に次ぐ過去2番目の成績です。

GPIFは資産ポートフォリオの方針として、国内・海外の株式と債券にそれぞれ25%ずつ配分しています。23年度の資産別収益は外国株式がプラス19兆円、国内株式がプラス19兆円、外国債券がプラス7兆円でした。国内外の株高の恩恵に加え、円安が進み外貨建て資産の含み益が増えたことが要因です。他方で国内債券は、日銀がマイナス金利を解除して金利が上昇(債券価格は下落)した影響を受け、1兆円のマイナスでした。

2024年度は5年間の中期目標の最終年度にあたります。現在の運用目標は年間で「名目賃金上昇率+1.7%」です。公的年金の支給額は賃金の変動に応じて改定されるため、積立金の運用でも賃金上昇率のトレンドを勘案します。

年金積立金の市場運用が始まった2001年からの23年間で、名目賃金上昇率は年率0.09%と極めて低い水準が続いてきました。その分、運用目標のハードルも低く押さえられてきた面があります。しかし、24年度の春闘で決まった賃上げ率は5%超とバブル期以降の最高を更新しました。このような傾向が続けば、GPIFに期待される運用利回りの水準も引き上がることになります。

今後、運用目標と基本ポートフォリオの見直し作業が本格化します。厚生労働省の社会保障審議会資金運用部会で今秋以降、GPIFの25~29年度の目標が議論され、それをもとにGPIFが25年3月に基本ポートフォリオの新たな方針を公表する見通しです。とりわけ、国内株と外国株の割合を10年ぶりに引き上げるかが焦点となります。

運用額の規模でGPIFと比肩するノルウェー政府年金基金の場合、ポートフォリオの7割を株式が占めます。カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)にいたっては株式比率が9割近くにのぼります。

GPIFの運用成績は老後の暮らしを支える公的年金の持続性にかかわるがゆえ、市場の変調で運用損を出すたびに大きな非難を浴びがちです。246兆円の運用資産額を誇る「資本市場の横綱」が繰り出す次の一手に注目が集まります。