いよいよ新紙幣の発行が始まりました。新1万円札の肖像画に採用される渋沢栄一は「近代日本経済の父」と呼ばれ、第一国立銀行(旧・第一勧業銀行、現・みずほ銀行)など多くの銀行の設立に尽力しました。
七十七(しちじゅうしち)銀行は、渋沢栄一とのかかわりが特に深い銀行です。設立時に支援を受けたほか、第一国立銀行から人材の派遣や宮城県における事業の譲受を受けています。また渋沢栄一が相談役を務めたこともありました(参考①:渋沢栄一記念財団 七十七銀行、参考②:七十七銀行 七十七銀行と渋沢栄一の縁)。
そんな七十七銀行ですが、足元は好調なようです。純利益は3期連続で過去最高を更新したほか、株価も順調に値上がりしています。銀行株は全体的に上昇傾向ですが、その中でも七十七銀行の値上がりは顕著です。
今回は渋沢栄一ゆかりの銀行、七十七銀行に焦点を当ててみましょう。概要と業績、また新しい株主還元方針を紹介します。
東北最大の地方銀行 婚活サービス事業にも参入
七十七銀行は宮城県を地盤に持つ地方銀行です。東北最大の都市である仙台市に本店を持ち、宮城県を中心に140以上の拠点を持っています。グループ会社を通じリースや証券、クレジットカードなどの金融サービスを提供しています。社名は国立銀行(※)として77番目に設立されたことに由来します。
※国立銀行条例に基づく銀行のこと。国営ではなく民営。国立銀行条例に基づき153行が設立された(参考:日本銀行 第一銀行、七十七銀行など、数字の付いた銀行名の由来は何ですか?)。
七十七銀行の規模は東北の地方銀行でトップクラスです。総資産は10兆円を超えていますが、これは東北地方で首位、全国では13番目に位置します(2024年3月期)。
【東北地方の地方銀行 総資産ランキング(単体、2024年3月期)】
1.七十七銀行(宮城):10兆4712億円
2.東邦銀行(福島):6兆7382億円
3.岩手銀行:3兆9251億円
4.青森銀行:3兆6421億円
5.秋田銀行:3兆5671億円
6.山形銀行:3兆1320億円
7.みちのく銀行(青森):2兆3210億円
8.北都銀行(秋田):1兆5589億円
9.荘内銀行(山形):1兆5067億円
10.東北銀行(岩手):1兆0098億円
七十七銀行は婚活サービス事業に参入したことでも話題です。完全子会社の七十七ヒューマンデザインを通じ、2024年4月に結婚相談所「77結び(ななむすび)」を開業しました。取引ネットワークを通じた相手探しや、家計の視点を含めた婚活支援など、銀行グループの強みを生かしサービスを提供します。七十七銀行によると、七十七ヒューマンデザインはマッチングアプリの参入も検討しているようです(出所:七十七銀行 結婚相談所の開業のリリース(2024年4月1日))。