新札発行に便乗して、高齢者を狙う「詐欺」が横行する可能性も

また同時に、新札発行による便乗詐欺事件には注意した方が良さそうです。財務省や日本銀行も注意喚起を行っていますが、たとえば以下のような詐欺が考えられます。

「従来のお札が使えなくなるので交換します」

「交換するので、従来のお札を私に預けて下さい」

「古い紙幣を振り込めば、代わりに新しい紙幣に交換します」

といったことをかたって、現行のお札を詐取する手口の詐欺です。この手の詐欺は、恐らく高齢者がターゲットになりやすいと考えられます。なぜなら、自宅に多額の現金を置いたままにしているのは、高齢者が多いと考えられるからです。

また、情報の分断が生じやすいのも、高齢者の特徴です。最近、政府広報にしても何にしても、インターネットで情報を流せば“それでおしまい”というケースが見られます。確かに、上記の告知は日本銀行や財務省、全国銀行協会などのホームページを通じて告知されていますが、高齢者でこの手のホームページに日々、アクセスして情報を収集している姿を、筆者は全く想像できません。

高齢者がこの手の詐欺に引っ掛からないようにするためには、もし子供がいるのであれば、子供が注意喚起をするべきでしょう。特に一人暮らしの高齢者は狙われやすいので、遠く離れたところで一人暮らしの親が生活している場合は、日頃から電話でコミュニケーションを取り、注意喚起をするのが大事です。

なお、一度発行された銀行券、つまり日本だと日本銀行が発行している紙幣のことですが、これはよほどのことがない限り、通用力を失うことはありません。これは日本銀行のホームページにも書かれていますが、日本銀行が日本銀行として初めて紙幣を発行したのは1885年のことで、現在までに53種類の紙幣を発行しています。

このうち、特別な措置として通用力を失った紙幣は31種類ありますが、それは

(1)関東大震災後の消失兌換券の整理(1927年)
(2)終戦直後のインフレ進行を阻止するための新円切り替え(1946年)
(3)1円未満の少額通貨の整理(1953年)

以上の3回で31種類の紙幣が通用力を失っていますが、それ以外の紙幣は今も十分に使えます。

たとえば、今の30歳前後の人たちは見たことがないと思いますが、1986年1月4日に発行停止となった「聖徳太子」を肖像とした1万円札や5000円札、「伊藤博文」を肖像とした1000円札、1994年4月1日に発行停止となった「岩倉具視」を肖像とした500円札などは、現在も日銀券として通用します。

ただし、自動販売機や券売機では使えません。そもそも聖徳太子の1万円札は、サイズが縦84mm、横174mmですが、現在の福沢諭吉を肖像とする1万円札のサイズは、縦76mm、横160mmです。当然、今の自動販売機や券売機で、旧札を使用することはできませんから、それを不便に思っている人は、日本銀行の本支店で新札に交換してもらえます。