株がインフレに強いわけ
最後は株式です。株式もインフレに強い資産のひとつと言われています。株価には企業価値が反映されます。企業価値とは、さまざまな見方はあるものの、端的に言えば業績が向上し、利益が積み上がることです。
売上や利益は名目上の数字です。たとえば1個1000円の商品が1億個売れると、売上は1000億円になります。利益率が10%だとしたら、利益は100億円です。
ところが、物価が上昇して商品1個あたりの値段が1200円になったとします。すると、売れる個数が同じ1億個だとしたら、売上は1200億円になります。全く同じ商品が同じ個数売れたとしても、インフレでモノの値段が上昇すれば、それだけで売上が大きく伸びるのです。同時に利益も増えます。
株式がインフレに強いと言われる理由がこれです。企業価値が売上や利益を反映したものだとしたら、インフレは企業価値を上げる要因のひとつになります。そして、株価は企業価値を反映するため、インフレは株価を押し上げる要因のひとつになると考えられるのです。
また、株式には他の資産にはないメリットがあります。
まず少額資金で購入できることです。銘柄によって株価は千差万別ですから一概に言えませんが、最低取引株数は100株単位なので、仮に株価が1000円だとしたら、最低投資金額は10万円で済みます。そのうえ、最近は端株といって、1株単位での取引を実現している証券会社もあるので、仮に1株の株価が1万円くらいする値嵩株でも、1株単位で売買できれば、金額は1万円です。
手前みそで恐縮ですが、マネックス証券が扱っている「ワン株」は、その代表的なサービスのひとつ。1株単位で売買でき、特に30代以下の世代で高い人気があります。買付手数料が無料という点も、大きな魅力です。
確実性の高い配当金の魅力
次にインカムゲインが得られる点も株の魅力のひとつといえるでしょう。株式投資というと、株価の値上がり益を狙うものと思っている人も多いでしょうが、配当というインカムゲインも得られます。
配当は、その会社が得た利益から法人税を支払って残った税引後利益のうち、一定割合を株主に還元するというものです。この税引後利益のうち何%を配当するかを示すのが「配当性向」です。仮に税引後利益が50億円で、配当性向が40 %であれば、20億円が配当に回されます。
そして、1株あたりの配当を株価で割って求められる数字が「配当利回り」になります。もし株価が1000円で、配当金額が50円だとしたら、この株式の配当利回りは5%になります。
株式投資で得られるリターンは、株価の値上がり益と、この配当の2つになるのですが、株価はさまざまな要素によって決まるので、値上がり益のほうは不確実性が高くなります。これに対して配当は、通常であれば急激に増えたり減ったりしないので、確実性の高いリターンになります。
金や不動産なども、確かにインフレリスクをヘッジすることは可能ですが、最も手軽に、誰もが利用できるのが株式投資。自分が持っている資産をインフレから守るためには、まず株式投資を軸にして考えることが大事なのです。
●第2回は【高配当時代の到来⁉ なぜこれまで日本では「株主軽視」が続き、最近変わりつつあるのか】で、増配する企業が増えている背景を解説します(6月26日に配信予定)。
利回り5%配当生活
広木隆 著
出版社 かんき出版
定価 1,760円(税込)