少子高齢化が大きく進んだ現代の日本では、ひとりきりで最期を迎える事態は決して珍しくありません。そのため自分で意思決定できなくなったとき誰に委ねるか、どのように判断してもらうかをきちんと考えておく必要があるでしょう。
話題の書籍『あなたが独りで倒れて困ること30』では、お金や健康など独身者を襲うリスクや「おひとりさま時代」を生き抜く具体的なヒントについて、司法書士の太田垣章子氏がやさしく解説。今回は本書の『はじめに』、第1章『おひとりさまリスク――「お金の問題」』の一部を特別に公開します。(全3回)
●第1回:“サザエさん”的家族関係はもはや過去の話…「1億総おひとりさま時代」に必要なこと
※本稿は、太田垣章子著『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
自分が倒れたあとのお金なんか考えたことがありませんでした……。
一生懸命にお金を貯めて来て、そのお金が自由に使えなくなるだなんて、考えたこともないと思います。誰だって、今の元気な自分を基準に考えますよね?
でもちょっと待って。死ぬ寸前まで、自分の足で銀行に行けるとか、頭がはっきりしている人なんて、そんな方がもしいらっしゃるなら私がお会いしてみたい! 多くの方々が、判断能力が鈍ってきたり、自分では銀行に行けなくなってしまいます。
そう、それが当たり前の世界なのです。でも多くの方々は、その「ほぼあり得ない」将来を想定して生きています。
以前は親の預金口座から子どもが代わりに預金を引き出したりもできましたが、今や本当に厳しくなってしまったのが「本人の意思の有無」で、これがとても重要視されるのです。
それはそれで勝手に使われないというメリットもある反面、親族であっても、自由に預金の出し入れができなくなってしまいました。
そうなると、どうなるのでしょうか。金融機関は名義人が認知症になったと分かった段階で、口座をブロックしてしまいます。つまりその口座のお金は、もう使えなくなるのです。
「親が施設に入ることになって、そのお金を親の口座から使いたいんです。だって親のために使うのですから! 自分たちが勝手に遊ぶお金じゃありません。それでもダメなんですか?」
そんな状況に置かれて、困ったご家族の口から、半ば憤りにも似た、そしてすがるような思いがこぼれます。でもダメなんです……。
ご本人の意思が確認できなければ、お亡くなりになるまでご家族がその費用を立て替えるか、法定後見制度を利用するしかなくなってしまいます。それなのに未だに自分は「ボケない、死なない」と備えを先延ばしにしている人が後を絶ちません。
子育てと違い、ゴールがいつか分からないのがこの問題の難しいところ。だからこそ自分のお金を自分のために、きちんと使えるようにしておく必要があるのです。