延命処置の意思を周囲と分かち合うための具体策は…
幸い、叔母の意識は1週間で回復し、一般の病棟に移ることができました。心臓がもともと弱かったところに風邪を引いてしまい、一時的に心肺機能が低下したようで、後遺症もなく施設に戻れそうです。
絵美さんはまた仕事が忙しくなりそうで、退院に付き添うことはできないので、施設の人と相談して、同じ法人が運営する付き添いのサービスを自費で利用することにしました。
延命処置について調べていくと、「リビング・ウィル」「事前指示書」「アドバンスト・ケア・プランニング」などの言葉があることが分かりました。様々な形はありますが、自分の希望を周りと話し合い、文書の形で残しておけるものです。
絵美さんはまず、自分は何を希望するのかを書いてみようとしましたが、実際自分がその時になったらどう思うかはわからないと悩んでしまいました。もし、妹があと数週間で外国から帰ってくると言われたらそれまでは延命したいし、すぐに会えるなら延命処置を希望せず、会えたのちに「逝かせてほしい」気がします。苦痛が大きいことは嫌だけど、それほどでもないならできるだけ長く生きていたいと思います。書面の例はシンプルに見えますが、決めるとなると難しく、記入できませんでした。
絵美さんですら悩んでしまうのに、体が弱く認知機能が低下している叔母にいきなりこのような判断を迫ることは気が引けます。ですが、この間のようなことがまた起きた場合、何も知らずに“判断だけ”下すこともできません。「まずゆっくり話をすることからかな」とパートナーに話すと、「もしバナゲーム」というものがあると教えてくれました。一般社団法人iACPが翻訳しているもので、カードゲームの形をとって、自分にとって大事なこと(家族と一緒に過ごす、人との温かいつながりがあるなど)を取捨選択していくものです。
確かに、自分のことを考えたときも、いきなり延命をしたいかどうかではなく、妹のことが真っ先に頭に浮かんでいました。死について考えるより、叔母が何を大切に思っているかを知るほうが、これから先何か代わりに考えなければならない時に、よりよい判断ができるような気がします。今度訪問した時に、母の思い出も話したりしながら、一緒にやってみるつもりです。