代表的な「配当貴族」 増配は続くか
花王は日本を代表する「配当貴族」でもあります。配当貴族とは一定の期間以上連続で増配している企業を指す言葉です。例えばS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出する「S&P500配当貴族指数」は25年以上連続で増配する企業で構成されます。
配当金を単に出すだけでなく長期にわたって増やし続けるには、事業や財務に相応の安定性が求められます。したがって配当貴族には優良企業が多く、投資家の関心が高いと考えられます。
花王は2022年度まで33期連続の増配を記録しました。2022年度の1株あたり配当金は148円と、2013年度(同64円)から9年で2.3倍に増加しています。
【1株あたり配当金の推移】
しかし現在、花王の連続増配が危ぶまれています。純利益が2018年度をピークに減少傾向が続いているためです。配当性向(配当金が純利益に占める割合)は2017年度で37%でしたが、2022年度では81%にまで上昇しました。当期の利益で十分まかなえていた配当金は、徐々に余裕がなくなってきています。
【純利益と配当金総額の推移】
花王は2023年度の配当金を前期より2円多い150円と予想しています。対して1株あたり純利益の予想は88.2円です(いずれも同第2四半期時点)。予想通りなら、花王は当期の純利益を超えて配当金を支払うことになります。
会社法は一定の範囲内なら当期の純利益を超える配当も認めています。しかし稼いだ金額を超える分配は企業からの財産の流出を意味します。実力以上の配当は維持が難しく、増配はなおさらでしょう。
配当金の支払い限度額の目安となる利益剰余金は7226億円です(2023年12月期第2四半期)。帳簿上は余裕がありそうですが、増配を続けるなら相応の増益が望まれます。