本当に必要な老後資金を考える

健康寿命にしても、平均寿命にしても、あくまでも参考値に過ぎません。人の寿命や健康状態は個々人によって差がありますから、健康寿命を過ぎても、なお健康状態を維持できている人もいるでしょうし、平均寿命を超えて長生きする人もいます。

ですから、あくまでも参考値という前提にはなるのですが、健康寿命と平均寿命を押さえておけば、本当の意味でお金が必要な期間をある程度、類推できます。

例えば男性の場合、2022年の数字で考えると健康寿命が72.57歳で、平均寿命が81.05歳ですから、不健康期間は約8.5年です。また女性は健康寿命が75.46歳で、平均寿命が87.09歳ですから、不健康期間は約11.6年です。

上記のように考えると、老後の生活に必要な資金は2000万円だとか3000万円だとか言われますが、不健康期間を乗り切りさえすれば良いとすれば、そこまでの金額が必要なのか、という話になります。

平均寿命・健康寿命から必要な老後資金を計算!

よくこの手の話で引き合いに出される老後2000万円問題を例に挙げると、高齢者無職世帯の平均的な家計収支は、月々の実収入が20万9198円、実支出が26万3718円。両者の差額である5万4520円が不足額になり、老後を30年間と想定すると、5万4520円×12カ月×30年=1962万7200円、つまり約2000万円が不足するわけですが、健康寿命に達するまでは自分の身体を使って働くことを前提にすれば、おそらくそこまでの資金は必要ないのかもしれません。

例えば夫婦が同い年で、夫が健康寿命に達するまで働き、不健康期間に入ったら仕事から完全に引退して悠々自適の生活を想定したとしても、妻が平均寿命に達するまでの年数は約14.5年です。

これを前出の老後2000万円問題でモデルケースになった毎月の不足金額である5万4520円で計算すると、14.5年間で必要な資金は948万6480円です。ちなみにこの数字は14年と半年という期間で計算した場合の不足金額です。

しかも、夫婦が同い年であれば、夫の平均寿命である81.05歳以降、女性の平均寿命である87.09歳までの約6年間は、夫婦で暮らしている時に比べて使うお金は減るはずですから、月々の不足金額は5万4520円にはならないと考えられます。

単純に割り切れる話ではありませんが、例えば毎月の不足金額が半分になるとしたら、その額は2万7260円に減額できます。

この場合、夫婦で過ごす不健康期間が8.5年とすると、この間の不足金額は556万1040円。そして、妻が1人で生活する6年間の不足金額は196万2720円ですから、合計で752万3760円になります。