「元本確保型は手数料で損」の誤解

iDeCoを元本確保型で運用する方法は「手数料で損する」と批判されることも少なくありません。しかし節税の効果を考えれば、手数料を考慮してもお得なことが多いでしょう。

確かにiDeCoには手数料が必ずかかります。国民年金基金連合会や信託銀行に支払うもので、加入時に2829円、積立時に1回あたり171円などが発生します。

元本確保型では運用益には期待できません。したがって、手数料で残高が減少する可能性は高いと考えられます。

ただし、所得控除による節税額は手数料を上回りやすいでしょう。iDeCoの最低積立額は月5000円、年間で6万円です。先述の最低税率の15%でも9000円の節税に期待できます。対して手数料は、加入時のコストがかかる初年度でも4881円であり、節税額の方が大きいことがわかります。

これを40年間続けた場合、残高は手数料で8万5000円ほど目減りします。一方で累計の節税額は36万円となり、やはり税金の軽減額の方が大きくなります。

【iDeCoの手数料と節税額の比較(年間積立額:6万円、利回り:0%)】

  積立額
(累計)
手数料
(累計)
残高 節税額
(累計)
 10年目 60万円 2万3349円 57万6651円 9万円
 20年目 120万円 4万3869円 115万6131円 18万円
 30年目 180万円 6万4389円 173万5611円 27万円
 40年目     240万円   8万4909円   231万5091円   36万円

※加入時手数料:2829円、積立時手数料(年間):2052円(171円/回)
※所得税率:5%、住民税率(所得割):10%

元本確保型によるiDeCoの運用は、手数料による目減りは起こり得ます。しかしトータルで考えれば一概に「損をする」とまではいえません。