為替ヘッジの考え方でよくある誤解

為替ヘッジとは何かというと、為替先物予約などを利用して、一定期間後に外貨を円に戻す際の為替レートを事前に取り決めておき、円高が進んだ時に生じる為替差損が大きく膨らまないようにするための取引です。

ただし、為替先物予約を行うと、満期時までに大きく円安が進み、為替先物予約をしていなければ多額の為替差益が得られた状況になったとしても、事前に外貨を円に替える際の為替レートを取り決めているため、為替差益を得ることはできなくなります。

それでも金利が高い海外の預貯金を利用すれば、少なくとも日本の預貯金に預けておくよりはマシだろうと考える人もいると思います。

9月25日から三井住友銀行では、1年物外貨定期預金に適用される利率を年5.30%にします。5.30%の年利率なら、為替差益が得られなくても十分にペイすると思うでしょう。

しかし、これも残念ながら違います。なぜなら為替ヘッジコストがかかってくるからです。

ヘッジコストとは、自国通貨よりも高い金利の通貨を、一定期間後に売却するという為替先物予約を行う場合に負担しなければならないコストです。

一般的に、為替ヘッジコストは金利差分が反映されます。たとえば今、米ドルを買い、1年後にその米ドルを売却するという為替先物予約を行うと、日本と米国の金利差分のコストがかかってくるのです。

諸外国で上昇傾向をたどる為替ヘッジコスト

大和アセットマネジメントが9月15日にリリースしたMarket Letterという情報提供資料によると、為替ヘッジコストが米ドル、ユーロ、カナダ・ドルなどで上昇傾向をたどっているということです。

なぜ為替ヘッジコストが上昇しているのかというと、日本と海外の金利差がどんどん広がりつつあるからです。確かに最近は日本も物価が上昇し始めており、金利には上昇圧力が強まっています。

しかし、日本は極めて慎重に、かつ漸進的に利上げの環境を醸成しようとする一方、米国やユーロ圏などの諸外国は、物価上昇圧力が強いこともあり、かなりのペースで利上げを行ってきました。その結果、日本と海外の金利差は大きく広がっており、それが為替ヘッジコストの上昇につながっているのです。