現状、物価上昇圧力は弱まりつつある
さて、ガソリンを一例として取り上げましたが、多くの方は最近の物価上昇に対して辟易していらっしゃるのではないでしょうか。ガソリンは言うまでもなく、食品関連の値段も上昇が続いています。
とはいえ、物価上昇圧力は一時期に比べると、やや弱まりつつあります。それは、企業物価指数の上昇がやや緩んできたからです。
一般的に、物価には2種類あります。1つが、私たちの生活実感に対して密接に関連している「消費者物価指数」です。総務省が毎月調査・発表しているもので、家計が購入するモノやサービスの価格を総合的に把握するためのものです。
これに対して、もう1つの物価である「企業物価指数」は、日本銀行が毎月調査・発表しているもので、企業間で取引される物品の価格水準を把握するのに用いられます。例えば、部品メーカーが完成品メーカーに販売した部品の値段などが捕捉されています。
別の見方をすると、企業物価指数は最終消費者が手にする製品を製造する際にかかる、さまざまなコストの値動きが反映されるとも言えるでしょう。したがって、企業物価指数と消費者物価指数は、基本的には連動します。
過去の物価の動きで分かる「企業努力」の限界
では、実際に過去、両者の動きがどうだったのかを比較してみましょう。
消費者物価指数は「生鮮食品を除く総合」、企業物価指数は「国内企業物価指数」の前年同月比です。
両者の推移を見ると、常に企業物価指数の方が、消費者物価指数の数字をはるかに高く上回っているのが分かります。2022年1月だと、企業物価指数が9.1%も上昇したのに、消費者物価指数はわずか0.2%の上昇に止まっています。
これは、企業段階で物価上昇を吸収して、最終消費者の手に渡る段階ではできるだけ値上げをしないように、企業努力を重ねていたからです。
しかし、企業努力にも限界があります。2022年4月以降、消費者物価指数の前年同月比が徐々に上昇し、同年12月に4.0%台に乗せたのは、最終消費者への価格転嫁が始まったからに他なりません。
今年に入ってからも企業物価指数の上昇に歯止めがかからなかったら、恐らく消費者物価指数は、少なくとも4%超の上昇が続いていたかもしれません。