配当生活に必要な資金は?

配当金とは、企業が出資の見返りとして株主に利益の一部を支払うものです。企業は株式を発行して資金を調達しますが、その対価として配当金を支払うことがあります。直接的に企業の資金調達に参加しなかったとしても、取引所で株式を購入すれば配当金を受け取る権利を得られます。

配当金を目的に株式投資を始める場合、参考となるのが「配当利回り」です。配当金を株価で割って算出される値で、投資額に対して1年間にどれくらいの配当金が支払われるかの目安となります。例えば配当利回り3%の株式を100万円分買った場合、1年間に3万円の配当金を受け取れるという意味になります。

神崎さんの支出額は月に30万円なので、年間の生活費は360万円。これを配当利回りで割ると、配当生活に必要な投資額が計算できます。例えば配当利回り3%なら1億2000万円、5%なら7200万円分投資すると、配当金で生活費をまかなえる計算です。

なお、東証プライム市場に上場する銘柄の単純平均配当利回りは2.23%です(2023年7月 出所:日本取引所グループ)。これで360万円分の配当金を得るには1億6143万円の投資が必要となります。配当生活の実現のハードルは高いといえるでしょう。

高利回り銘柄ならハードル下がる 配当の変動には注意 

ではもっと配当利回りが高い銘柄を選んで投資した場合はどうでしょうか。日本経済新聞ウェブサイトで調べたところ、予想配当利回り上位3銘柄はジャフコグループ、世紀東急工業、日本たばこ産業となりました(2023年8月2日終値時点)。

【予想配当利回り上位3銘柄(2023年8月2日終値時点)】
・ジャフコグループ:8.30%
・世紀東急工業:6.21%
・日本たばこ産業:6.08%
※予想配当金は日本経済新聞記者の予想

出所:日本経済新聞 日本株ランキング 予想配当利回り

8%もの配当利回りがあれば、4500万円投資すれば年間に360万円の配当金を受け取れることとなります。神崎さんの金融資産1800万円を一括投資し、年間600万円のプラスが生じる家計から資金を投じると、単純に考えれば5年足らずで達成できる計算です。高利回り銘柄にだけ投資すれば、配当生活の実現も夢ではなさそうです。

ただし配当金は変動します。上述の3銘柄も、配当金の額は増加や減少を繰り返してきました。

【各社の年間配当額(実績)】

   ジャフコグループ   世紀東急工業   日本たばこ産業 
 2018年度 112円 27円 150円
 2019年度 118円 47円 154円
 2020年度 138円 43円 154円
 2021年度 51円 30円 140円
 2022年度  150円 30円 188円

 

出所:各社の決算短信

配当金の原資は企業が稼ぎ出した利益であり、業績が悪化すれば減額もあり得ます。無配(配当金が支払われないこと)に陥る可能性もゼロではありません。配当利回りが高い銘柄に投資したとしても、将来にわたって確実に配当金を受け取れる保証はないのです。