買収の危機を助けられた楽天との浅からぬ関係
誕生してすぐに大きな収益を稼ぎ出したサイバーエージェントは、創業からわずか2年後に上場を果たします。しかし折り悪くITバブルの崩壊に直面し、他のインターネット関連銘柄と同じくサイバーエージェント株式は大きく売り込まれました。
【当時のサイバーエージェント株価の推移(2000年3月末=100)】
出所:Investing.comより著者作成
株価が急落したこと、また上場で得た潤沢な現金を持っていたこと、さらに創業者の藤田晋(ふじた・すすむ)氏の保有割合が比較的小さかったことから、サイバーエージェントには買収の矛先が向かいます。買収されても一般に企業は存続しますが、株主総会を掌握されれば藤田氏をはじめ従来の経営陣は刷新される可能性がありました。
その窮地を救ったのが楽天(現・楽天グループ)です。2001年12月にサイバーエージェント株式の8.6%を取得する資本提携を発表し、藤田氏と協力して同社の安定株主となりました。これにより、サイバーエージェントは買収の危機を脱することに成功します。
その後、ブロードバンドの普及などで爆発的に増加したインターネットユーザーは、サイバーエージェントにも追い風となりました。先行投資で赤字が続いていましたが、2004年度に通期で初めて黒字化を達成しています。
快進撃は現在まで続いており、売上高は2022年度に7000億円台に到達しました。買収の危機から救った楽天グループの判断が、サイバーエージェントの今日の成功に結び付いているといえるでしょう。
【サイバーエージェントの業績推移(2004~2022年度)】
出所:サイバーエージェント 統合報告書より著者作成
楽天グループは2023年5月、モバイル事業の苦戦を乗り切るため増資を実施し、サイバーエージェントはこれに約100億円を出資する形で応じています。買収の危機から脱したエピソードは、両者の特別な絆となっているのかもしれません。