・わずか1カ月で廃止された“幻のスマホ決済” 大失敗に終わった理由
通信インフラは、今や水道や電気と並び欠かすことができない重要なインフラとなっています。その寸断は、多くの人に影響を与えることとなり、各事業者はその保全を担う大切な役割を持っています。
しかし2022年、「au」を運営するKDDIの携帯電話サービスで大規模な通信障害が発生してしまいました。通信しづらい状況が長期間続き、2000万人以上が影響を受けます。同社は同年7月29日に一律の返金を表明しますが、その額が200円だったことでも話題を呼びました。
61時間もの通信障害 おわびの額は200円
KDDIの通信障害の原因は「VoLTE(ボルテ)」交換機の不具合でした。VoLTEとは、携帯電話専用のネットワークである「LTE」上で音声通話を行う技術です。LTEは第4世代(4G)の通信規格の1つで、もともとはデータ通信専用の回線でしたが、2014年に大手キャリアがVoLTEを導入し音声通話もLTE上で行われるようになっています。
事故はメンテナンス中のミスによって引き起こされました。多摩にあるVoLTE交換機でルーターの経路設定を誤り、通信が過剰に繰り返される輻輳(ふくそう)が発生します。分散処理を通じて他の拠点でも輻輳状態に陥ったため、全国的に音声通話を中心に通信しづらい状況となりました。
KDDIは流入制御などを実施し設備の負荷軽減を図りますが、輻輳からの解消には至りません。最終的に異常な状態となったVoLTE交換機を特定し切り離すことで復旧しますが、不具合の解消までに時間がかかり、大規模な障害となってしまいました。事態を重く見た総務省は、通信障害では初めて総務相名で行政指導を行っています。
【KDDIの通信障害の概要】
・影響時間:7月2日1:35~7月4日15:00(61時間25分)
・影響エリア:全国
・音声通話の影響数(VoLTE):約2278万人
・データ通信の影響数(4G、5G):約765万人
出所:KDDI 7月2日に発生した通信障害について
KDDIは、約款に基づいて返金する必要がある約271万人について、基本使用料の2日分相当額を請求額から減算する処置を行いました。また、その他の顧客についても「おわび返金」としてスマートフォンなどを契約する約3589万人に、一律で200円を請求額から差し引くことで返金します。
また再発防止策として、メンテナンス時の作業手順やVoLTE交換機における輻輳制御の見直し、また輻輳が発生したときの復旧手順の確立を発表しています。さらにAIなどを活用した自動復旧システムなどの開発に向け500億円を投資する方針も表明しました。