原油価格の上昇で石油元売り会社の利益が増加する理由

近年は原油価格の上昇を受け、石油元売り会社の利益が増加傾向にあります。出光興産も2022年3月期に最高益を更新しました。しかし翌期は原油の値段が下落したことから最終利益は約9%減少しており、2024年3月期も6割の大幅な減益予想となっています。

【出光興産の業績】

※2024年3月期(予想)は、2023年3月期時点における同社の予想

出所:出光興産 決算短信

石油元売り会社は原油を仕入れて製品を作るわけですから、原油価格が安い方が利益に結び付きそうです。しかし実際には逆の動きとなりました。なぜこのようなことになるのでしょうか。

原因は、石油元売り会社の備蓄が関係しています。石油会社は法令や事業上の制約から、在庫として大量に原油を備えています。そのため、原油の値段が上がると在庫に評価益が生じるのです。出光興産も最高益を達成した2022年3月期では、前期に75億円だった在庫評価益が2330億円にまで拡大しました。

また原油価格の上昇は一般に石油製品の価格を押し上げる傾向にあるため、仕入れと販売の価格差が拡大し利益が増加する効果もあるでしょう。このような理由から、原油価格が上昇すると石油元売り会社の利益が増えると考えられます。

【原油価格と出光興産の四半期営業利益(2022年3月期)】

Investing.comおよび出光興産 決算短信より著者作成

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。