残業が多いのはどの業界?

ところで、残業はどのような業界で多いのでしょうか。厚生労働省の「毎月勤労統計調査(2022年分確報)」によると、1月あたりの所定外労働時間は「運輸業、郵便業」が約22.6時間で最大でした。これは平均(同10.1時間)の2.2倍以上にもなります。「運輸業、郵便業」は総実労働時間でも最大となっており、長時間労働が常態化している様子がうかがえます。

【労働時間上位5産業(2022年)】

※値は月平均

出所:厚生労働省 毎月勤労統計調査(2022年分確報)

運輸業などで労働時間が長期化しているのは、他業種とのルールの違いも理由にあるでしょう。先述の改正労働基準法による労働時間規制は、実は特定の業種には猶予期間が設けられており、トラックドライバーといった自動車運転業務者に適用されるのは2024年4月からです。この違いが長い残業時間につながっている可能性があるでしょう。

なお、法律が適用されたあとも、トラックドライバーには他業種より長い残業が認められることとなっています。年間の時間外労働時間を720時間とする規制は、自動車運転の業務者においては960時間となっており、また他業種で適用される単月で100時間、2~6カ月平均80時間までとする規制もトラックドライバーには適用されません。

【法令上の残業時間の上限(特別条項付きの労使間合意がある場合)】

 

出所:厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説

トラックドライバーは荷物の積み下ろしや荷待ちなどで労働時間が長くなりやすい事情があり、上述したルールの違いはこれを反映したものだと考えられます。もっとも行政上は長期間労働を是正するルールが強化されてきており、物流業界ではドライバー不足を心配する声が聞かれるようになっています。