デフレより怖い「スタグフレーション」とは
2022年は顕著に物価が上昇したことから、「スタグフレーション」を懸念する声も聞かれました。スタグフレーションとは、景気の停滞と物価の上昇が同時に起こる現象のことです。
不景気は当然避けるべきことですが、それと同時に物価が上がることがなぜ懸念の対象となるのでしょうか。それは、スタグフレーションから抜け出すことは困難だからです。
金融政策によって景気を刺激する場合、中央銀行は一般に金利を引き下げ、家計消費や企業の設備投資を促します。しかし、これらの政策は副作用として物価の上昇を招くため、既に物価が上昇している中では安易に実施することはできません。
では物価の引き下げを優先する場合はどうでしょうか。この場合は反対に金利を引き上げるなどし、消費や企業活動の抑制を目指します。しかし、これらは一般に景気をさらに下押しするため、不況をより深刻にしかねません。
このように、金融政策は景気と物価の双方に影響を与えるため、スタグフレーションからの脱却を目指すと強い痛みが生じることになります。
【金融政策の概要】
スタグフレーションはこれまでオイルショック時に日本やイギリスなどで発生しました。2022年も原油といった資源価格の上昇が物価を押し上げたと考えられます。原油価格は落ち着きつつありますが、再び上昇に転ずればスタグフレーションに陥るかもしれません。
【WTI原油先物価格(2022年1月~2022年2月)】
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。