その大きな要因は、給与そのものが上がらないからです。

最近あらゆるメディアで取り上げられることが多い、日本の賃金上昇率。OECD(経済協力開発機構)の1990年から2020年の30年間の賃金の推移を見ると、OECD全体では133%と上昇しましたが、日本はわずかに107%です。

アメリカは148%、韓国は194%と伸びています。

加えて社会保険料や消費税はどんどんアップしています。

収入は上がらないうえに、出ていくお金が多くなれば、同じように生活していると貯蓄にまわせるお金が減るのは当然のことです。

そんな給与が上がらない時代に生きるわたしたちだからこそ、もっともっとお金に賢くなる必要があります。

特に若い世代の人たちには、これからたくさんのライフイベントが待っています。いまは実家に住んでいる人だっていずれはひとり暮らしをするでしょうし、パートナーがいれば結婚することもあるでしょう。結婚したら、子育てやマイホームのことを考える場面が生じるかもしれません。

若い人ほど、お金に対してシビアになってほしいと思います。

平均値と中央値の話の箇所で、一部にお金持ちがいると述べましたが、これからさらに、その差は開いていく可能性があります。お金を増やせる人はどんどん増やし、そうではない人はまったく増やせなくなるということです。

既に、その二極化は進んでいます。

先に出した貯蓄額のデータは2021年のものでしたが、2020年のふたり以上世帯の貯蓄額と比較すると、平均値は1436万円から1563万円へ127万円アップ、中央値は650万円から450万円へ200万円ダウン。

平均値がアップした大きな要因は、有価証券(株や債券など)の保有額が287万円から506万円にアップしたことです。

コロナ禍で未曽有の事態に陥ったことで、日銀がさらに金融緩和を行い、市場に出回るお金の量が増えていったことや、米国の株価が上昇したことが背景にあり、株や債券などを持っていた人はますます貯蓄を増やしたということでしょう。

逆に、株や債券を持たずに預貯金だけでやりくりしていた人は、かなり厳しい状況だったと推測します。

お金を味方にする知識を持っている人はどんどん増やし、そうではない人は貯まらないという二極化が、今後ますます大きくなっていくでしょう。

●後編(苦しい家計と日本経済、だからこそ「貯蓄1000万円」の壁を超えよう)では、日本の所得の実態を解説します。

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飯村久美著『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』
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