復興税が防衛費に置き換わる?

昨年12月に公表された「令和5年度与党税制改正大綱」において、現在個人にかけられる復興特別所得税を1%減じ、防衛費の財源として新たに1%分の付加税を課すという仕組みが盛り込まれました。復興税が直接転用されるわけではありませんが、実質的に復興に向かうための税収が防衛費に回ることとなります。

【防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(一部抜粋)】
わが国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり……所得税……について、以下の措置を講ずる。

所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する……

出所:自由民主党 公明党 令和5年度税制改正大綱

復興特別所得税の税率引き下げに合わせ、課税期間の延長が検討されていることも明らかになりました。本来は2037年までの時限的な処置でしたが、期間を延ばすことで税収の低下を補填する狙いがあります。報道によると、延長の期間は14年程度で調整されているようです。

防衛費の財源として、ほかに法人税やたばこ税の増税も組み込まれました。大綱では、2027年度までに1兆円の財源を確保するとしています。

日本が防衛費の増額を急ぐ背景には、不安定化した安全保障環境があります。ロシア・ウクライナ問題の発生以来、多くの国が防衛費を増額させてきました。日本も北朝鮮や中国といった周辺国との摩擦は少なくなく、防衛費を引き上げることで抑止力の向上を目指すようです。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。