この連載では、最近まで企業年金基金で年金資産の運用を担当していた人間として、またジャーナリストの端くれとして、今の企業年金の運用の風景を客観的に描いてきました。でも今回は、私の眼に映った心象風景も加わります。

リアルなセミナー続々と復活

昨年(2022年)後半あたりから、企業年金の運用担当者向けのリアルなセミナーが随分増えてきたように感じます。

もちろん、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進み、また「リモート疲れ」も加わって、対面での接触についてのハードルが下がってきたことが主な原因でしょう。

でも、それだけではないと思います。

これまでお伝えしてきたように、長期安定的な運用を目指す企業年金にとって、その「主食」は債券であり、「副食」は株式です。

ところが、昨年2月に勃発し、まもなく1年を迎えてしまうロシアによるウクライナ侵攻によって、世界の金融市場が激変。平時であれば逆相関であるはずの債券と株式の値動きが高い相関を示し、企業年金にとっての主食と副食がそろって大きく下落する事態になってしまいました。

だからといって企業年金は投資をやめるわけにはいきません。年金受給者のために、その企業年金に課せられた「予定利率」を単年度はともかく、複数年度にわたっては何としても達成しなければならないからです。

では、何か投資の妙案はないものか。運用担当者は悩み、運用会社もソリューションやアイデア、また具体的な商品を説明したい。双方のニーズが合致して、手応えの感じられる対面型のセミナーが徐々に活況を見せてきたように思います。