きっかけは老後資金への強い危機感にあり?

もちろん、そうした背景も一因ですが、2022年3月末時点で個人型の若年層で元本確保型商品の運用比率が大幅に低下する一方、外国株式型などリスク性商品の運用比率が大幅に上昇したのは、若年層を中心に老後に対する危機感が強まっているからとも考えられます。

企業型DCの場合、自分が働いている企業が採用していれば、基本的に加入を義務付けられますが、個人型であるiDeCoの場合、加入する人は自主的にアクションを起こさなければなりません。この5年間で、老後の資産形成に対して高い意識を持つ若年層が増えた結果、元本確保型商品の運用比率が低下する一方、リスク性商品の運用比率が高まった可能性があります。

また、レポートが指摘しているように、20~29歳のiDeCo加入者等に占める運用指図者の割合の推移を見ると、2017年3月末時点では前述したように61%を占めていたのが、2022年3月末時点では25%にまで低下しています。

つまり、5年前は老後の資産形成に対してあまり関心を持っていなかった若年層が、この5年間で強い関心を持つようになったとも考えられます。これも、若年層の間で老後資金に対する不安が強まっている証拠と見て良いでしょう。

若いうちから必要以上に老後への不安感を募らせるのもどうかとは思いますが、結果的にバランス良くリスク性商品に資金を配分しているのは、悪いことではありません。

とはいえ、このデータはマーケットに逆風が吹く直前の2022年3月末までのものです。その後、インフレの昂進や長期金利の上昇を受けて、世界的に株式市場は低調なため、その影響が2023年3月末時点の数字にどう表れるかが注目されます。

もし、元本確保型商品での比率が再び上昇しているようであれば、リスク性商品での運用に必要な長期投資の考えが浸透していないことになります。企業型DCも含めて、加入者に対する投資教育の真価が問われます。