老後のための資産形成の一環として、最近は来年から制度が大きく変わるNISAに対する関心が高まりつつありますが、個人型DCであるiDeCoであれば、運用益が非課税になるだけでなく、拠出した際の掛金は全額所得控除の対象になります。また、受取時に際しても、年金方式で受け取る場合は公的年金等控除が、一時金で受け取る際には退職所得控除が適用されるなど、幅広い税制優遇が受けられます。
企業型DCも、運用益非課税に加え、受取時には公的年金等控除や退職所得控除の対象になります。さらに企業型DCの場合、掛金を拠出する企業にとって、掛金を全額損金扱いにできます。
確かに、来年からスタートする新NISAには、投資可能期間の恒久化と非課税期間の無期限化、さらに非課税投資枠の大幅拡大といった魅力がありますが、確定拠出年金も税制メリットでは決して負けていません。老後の備えとして、NISAだけでなく確定拠出年金も積極的に検討する価値がありそうです。
5年で変化した元本確保型商品の運用比率
そんな確定拠出年金について、ニッセイ基礎研究所の「年金ストラテジー(Vol.319)」に、興味深い記事が掲載されています。「5年間で若年層の確定拠出年金の商品選択割合はどう変わったか?」というのがそれです。
具体的には、2017年3月末と2022年3月末における、20~29歳、50~59歳という年代別、企業型と個人型別に、確定拠出年金を運用するに際して、どのような商品を選択したのかを示したものです。
それによると、2017年3月末時点では、企業型も個人型も元本確保型商品である預金と保険の比率が高く、両方を合わせた比率は全体の50%を大きく超えていました。実数を挙げると、以下のようになります。
<企業型>
20~29歳・・・・・・60.0%
50~59歳・・・・・・56.4%
<個人型>
20~29歳・・・・・・67.9%
50~59歳・・・・・・66.1%
これが2022年3月末時点ではどのように変わったのかというと、
<企業型>
20~29歳・・・・・・38.5%
50~59歳・・・・・・43.9%
<個人型>
20~29歳・・・・・・16.4%
50~59歳・・・・・・42.3%
となっています。
本来、老後資産の運用は、若いときほどリスク性資産の比率を高めにして、年齢が上がるにつれて徐々にその比率を低めるように運用するのがセオリーと言われていますが、2017年3月末時点の数字を見ると、企業型、個人型の両方とも、20~29歳の方が、元本確保型商品での運用比率が高めになっています。
この理由について同レポートでは、「投資経験の浅い若年層が十分な知識を持っていないことや、関心が低いことなどが考えられてきた」としています。
確かに、20~29歳の若年層にとって、老後の生活を支えるための資産形成を考えるのは、あまりにも遠い話であり、とりあえず確定拠出年金には加入しているものの、元本確保型商品を放置しておくケースが多いのは、やむを得ない話なのかもしれません。