物価上昇で家計の消費支出は増える一方、収入は減少…

家計調査報告を見ると、消費支出(2人以上の世帯)の対前年同月の実質増減率は、6月の3.5%、7月の3.4%、8月の5.1%と上昇したものの、9月は2.3%、10月は1.2%というように、6月以降の伸び率のなかでは最も低い水準になりました。これは消費者物価指数が上昇したためです。ただ、それでも1.2%の上昇率ですから、消費者物価が上昇しているにも関わらず、個人消費は比較的底堅く推移していると考えることができます。

ただ、気になるのは勤労者世帯の収支です。2人以上世帯のうち勤労者世帯の実収入の対前年同月実質増減率は、10月が▲0.9%でした。過去に遡ってみると、2022年を通じて勤労者世帯の実収入は、順調に伸びているとは言い難い数字が並んでいます。前年同月比でプラスだったのは、1月の1.6%、3月の2.3%、9月の0.2%のみで、2月は▲0.1%、4月が▲3.5%、5月が▲2.7%、6月が▲1.4%、7月が▲4.6%、8月が▲1.8%、10月が▲0.9%です。内訳を見ると、配偶者の収入は9カ月連続で増加しているものの、世帯主の収入は7カ月連続の実質減少となりました。

また気になるのは、非消費支出が6カ月連続で増加していることです。非消費支出とは、税金や社会保険料など、世帯にとっては自由に使えない支出のことです。この額が6カ月連続で増加しており、かつ2022年10月のそれは、前年同月比で8.7%増となりました。新型コロナウイルス感染拡大時の行動制限で、さまざまな給付金や助成金、補助金が大盤振る舞いされた結果、国の財政は確実に悪化しており、これから増税などにより、その回収が行われることを考えると、非消費支出はさらに増加し、家計の可処分所得は、一段と厳しい状況になると考えられます。

この傾向を見ると、冒頭の調査結果に見られるように、この冬のボーナスは有効回答企業のうち21.2%が前年より増加し、かつ79.1%がボーナスや一時金を含めて支払われる予定ということですが、勤労者世帯の収入は、決して楽観視はできなさそうです。