「気がつけば90歳」というのが理想の老い方
老いはひとくくりにはできません。先にも書いたように、70代、80代、あるいは90代にそれぞれのフェーズがあるからです。「もう70過ぎたんだから」と自分を高齢者の枠にくくってしまう必要はありませんし、個人差も当然あります。
もちろん理想は、80代になっても90代になっても、元気でいられることです。
体力の衰えから来る多少の不自由は仕方ないとしても、90代でも背筋がシャンとして快活な男性はいくらでもいますし、若い人たちに混じって趣味を楽しんだりサークルで勉強している女性もいます。
そういう高齢者に出会うと、「すごいなあ。90歳を過ぎたのにこんなに元気で頭もしっかりしているなんて」と誰もが羨ましい気持ちになります。
「私はいま70歳を過ぎたばかりだけど、もうあちこち調子が悪い。90代でも元気な人はしっかり節制したり、身体も鍛えてきたんだろうな」と思いたくなるでしょう。
ところが、元気な90代の方にきいてみるとみなさん笑います。
「70代なんて年齢を意識したことはなかった。やりたいことをやって、好き勝手に生きてきただけですよ」といった調子です。
「あの当時に比べたら、いまはもう身体も思うように動かないし、疲れやすいし、新しいことを始める気力もなくなってきたし、やっぱり歳には勝てませんね」と笑っています。
つまり90歳過ぎても元気な人は、用心深く生きてきたから元気なのではなく、あるいはとくに身体を鍛えたわけでもなく、自分がやりたいことをやって毎日を楽しんで暮らしてきた人が多いのです。
「気がつけば90になっていた」とみなさん言います。それだけ快活に、毎日を退屈することなく70代を過ごしてきたということです。
そこで私から提案したいのは、70代を老いの入り口と受け止めたりしないで自分がやりたいことをどんどんやって、自由に生きようということです。
まだ老け込むには早過ぎる年齢なのですから、何でもできるはずです。ましてやりたいことや自分が好きなことなら楽しみながらできます。気分はもちろん、身体だってまだしゃんとしているのですから、自分からわざわざブレーキをかける必要はありません。
そして、まずは元気で70代前半を乗り切ることです。
「なんだ、70代なんてこんなものか。それなりに疲れやすくはなってきたけど、自分が好きなことならまだまだ楽しめるんだ」
そう気がつけば、少なくとも自分が高齢になっていくことに対しての悲観的な気分だけは撥ね退けることができると思います。