安過ぎる! 冤罪の補償額は1日1000円
袴田さんの拘束期間は非常に長く、執行は停止されているものの死刑判決も出されたままです。まだ無罪が確定したわけではありませんが、仮に袴田さんの冤罪が明らかになった場合、補償はどうなるのでしょうか。
懲役刑などを受けたあとに無罪となった場合、「刑事補償法」に基づいて補償を受けられます。ただし補償額はあらかじめ決められており、その最低額は1日あたりわずか1000円です。
【刑事補償法第4条「補償の内容」(一部抜粋)】
1.抑留又は拘禁による補償においては……その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
3.死刑の執行による補償においては、三千万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。
出所:e-Gov法令検索 刑事補償法
袴田さんは、逮捕から釈放されるまで約48年かかりました。1年を365日として概算すれば1万7520日ですから、もし1000円で計算されれば1752万円しか補償されないことになります。仮に最高額(1日あたり1万2500円)が適用されても、補償額は2億1900万円にとどまり、死の恐怖に48年間もさらされた損害に見合うとは思えません。
国家賠償法などに基づいて国に賠償を請求するケースも考えられますが、その場合、刑事補償法における補償額は減ってしまいます。刑事補償法は、その他の法で損害が賠償された場合、刑事補償法の補償額が減額される旨を定めているためです。
【刑事補償法第5条「損害賠償との関係」(一部抜粋)】
2.補償を受けるべき者が同一の原因について他の法律によって損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律(編注:刑事補償法)によって受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。
3.他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によって補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。
出所:e-Gov法令検索 刑事補償法
このように、冤罪に対する国の補償は十分とはいえません。袴田さんの無罪が確定した場合、国の補償のあり方について議論を呼びそうです。