2022年4月から、高校家庭科で金融教育が始まりました。しかし、日本人の「金融」や「投資」に関する基礎的なリテラシーには個人差があるのが実情でしょう。しかし、これから誰にとっても資産形成で人生100年時代に備えることが必須になる時代を迎えるにあたり、投資や金融の基礎は身につけておきたいもの。

そんな基本的な知識や理論についてまとめられているのが、北村慶氏の書籍『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』です。今回は特別に、第4章「資産運用の科学〜『長期・分散・積立投資』はなぜ勝てるのか?」の一部を公開します。(全4回)

※本稿は北村慶『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

短期投資はギャンブル

今回は、筆者が推奨する『長期・分散・積立投資』の3つの要素、「長期投資」「分散投資」「積立投資」が個人投資家にとって、どのような効果をもたらすのかを順にお話ししたいと思います。

まず、「長期投資」のメリットからです。ここでは、資産運用の中核にある「株式への投資」を例にお話を進めますが、「債券」や「不動産」といった他の運用対象資産でも結論は同様です。

一般に、株式での運用は危険なことだと考えられています。

読者の皆さんの中にも、「株式投資を始めたんだ」と友人・知人に言うことに心理的抵抗がある、という方もいらっしゃるでしょう。

「株をやってる」イコール「競馬やパチンコなどのギャンブルをやってる」という風に捉える方も多いかと思います。

学術的には、「株価は短期的にはランダム・ウォークする」ということが実証されています。ランダム・ウォークとは、「ある事象で、次に現れる位置が確率的に無作為(ランダム)決定される運動」のことを言います。

日本語では、乱歩とか酔歩と訳されています。酔っ払いが、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと予測不能の歩き方をするのが、ランダム・ウォーク的動きだと考えると理解しやすいかと思います。

投資商品に関してより正確に言えば、あらゆる情報が瞬時に行き渡り、価格形成に歪みが生じないような効率的な市場では、金融商品の価格は、短期的には、でたらめに動く、ということが学術的定説になっているのです。