所得・収入が「満足」VS「不満」 多数派はどっち? 

現在の生活、今後の生活、生き方や考え方、政府に対する要望などについて全国2700世帯から回答を得た「国民生活に関する世論調査(速報)」(内閣府、2025年9月26日公表)から家計や資産の現状を解説する。まずは所得や収入について見ていこう。

調査では単刀直入に「あなたは所得・収入の側面ではどの程度満足していますか」という質問を投げかけている。 

現在の生活の各面での満足度(所得・収入)

出所:「国民生活に関する世論調査(速報)」(内閣府)

満足 34.9%
不満 64.7% 

調査結果によれば、所得・収入で「満足」(=「満足している」+「まあ満足している」)と回答した人(”満足派”)の割合は34.9%。逆に「不満」(=「やや不満だ」+「不満だ」)と回答した人(”不満派”)は64.7%と満足派の2倍近い水準だった。最も満足度の低い選択肢(「不満だ」)の回答率も25.5%と4分の1を超えている。

同調査では、 生活全般に対する満足度も聞いているが、その答えは満足派と不満派が拮抗(50.2% 対 4 9.6%)しているだけに、お金の話に限ると事情が違うようだ。日本の賃上げ率は、阪神淡路大震災の発生やバブル崩壊後の不況が深刻化し始めた1995年から1~2%台が続いてきた 。賃金に対する長年の不満が積み重なってきたことも背景の一つかもしれない。

この傾向は継続しているのだろうか。過去5年間の推移を振り返ってみよう。 

現在の生活の各面での満足度―所得・収入―(参考表)  

(注)令和3年9月調査では、「あなたは、次の(1)から(7)の生活のそれぞれの面では、どの程度満足していますか。(1)所得・収入」と聞いている。
出所:「国民生活に関する世論調査(速報)」(内閣府)よりFinasee編集部作成

所得・収入の満足度について、2021年から2025年までの5年間で何か変化はあったのだろうか。調査結果によれば、2023年までは満足派が減り(39.7%から 31.4%、8.3ポイント減)、不満派が増える(59.7%から68.0%、8.3ポイント増)傾向だった。

2020年に急拡大した新型コロナウイルス感染症はワクチン接種など各種対策も奏功して徐々に沈静化。日本でも2022年頃から本格的に経済活動が再開した。しかしコロナ禍と入れ替わる形で顕在化したのが物価上昇だ。2022年4月の消費者物価指数(総合指数)は前年同月比で2%を突破。2023年1月には4.3%を記録し、直近(2025年8月)まで2%を超える物価上昇率が継続している。

物価上昇が進めば、同じ金額で購入できる商品・サービスの数量が減ってしまうため、所得・収入の満足度が低下した一因になった可能性もある。