ユーザー数の多い既存サービスに好機
ファーストパーティークッキーに代表される、自社で保有する消費者の購買・行動データなどを活用して顧客体験に沿った広告を届ける手法を「リテールメディア」と呼ぶ。個人を追跡するのではなく、店舗やサービスなど顧客との接点や接客の場に応じた広告を打ち出すイメージだ。追跡型広告の規制により、今後はリテールメディアの活用に注目が集まると考えられる。
顧客との接点でいえば、ユーザーを多く抱えており、精度の高い顧客分析が可能な企業に勝機があるといえる。
1億2400万人のアクティブユーザーを抱える配車サービス大手、米ウーバーテクノロジーズでは一部地域で後部座席のタブレットに広告を表示する取り組みを試験的に運用している。日本国内のタクシーでもタブレットに広告が流れる例はあるが、同社の場合はユーザーの行き先に対応した広告が流れるような形式だという。
また、米定額動画配信大手のNetflixも11月4日より広告付きの低価格プランを開始した。広告付きのベーシックプランは月額790円。一方、広告なしのベーシックプランは月額990円となっている。ユーザーは1時間につき平均4分の広告を視聴する代わりに、約2割安い料金でサービスを利用できる。
同じ動画配信サービスであるDisney+も、新たに広告付き低価格プランを開始する方針だ。Netflixの場合は新規会員数の増加が頭打ちとなり、ビジネスモデル再構築の必要に迫られた結果ともいえるが、デジタル広告市場の変化は動画配信各社にとって広告主確保の追い風となるかもしれない。
世界24ヵ国1万店舗以上を展開する世界最大の米スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」も2021年よりデジタル広告の内製化に踏み切っている。店舗の壁面や決済端末といったディスプレイに広告が表示される仕組みだ。広告は日時や場所、購入商品などと関連付けた出し分けが可能だという。同社の広告事業は2021年の売上高は21億ドルにのぼったと公表し、好調だといえる。