米国の金利上昇は、外債運用の収益性悪化に懸念

もっとも、「債券は償還まで保有すれば額面金額で償還金が戻ってくるから、債券価格がいくら下がっても問題ないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、それは個人ならそうです。個人の投資には決算がないので、どれだけ債券価格が下がったとしても、償還まで持ち続けることによって、しっかり利回りを確保できます。

でも、法人や機関投資家が保有している場合、話が大きく違ってきます。なぜなら毎年決算が行われるからです。仮に100円で購入した債券の価格が95円まで値下がりしたところで決算を迎えた場合、100円ではなく95円で評価しなければなりません。100円で買ったものが95円に値下がりしたところで決算の評価を行えば、5円分の損失を損益計算書に反映させる必要があります。つまり業績が悪化するのです。
ちなみに新聞記事によると、「メガバンクなどの大手行が保有する債券の評価額は22年度下半期に約1兆7000億円減少する。時価評価した地銀の債券保有残高も5700億円程度落ち込む見通しだ」とされています。

このように債券の評価額が減少すれば、銀行は貸出に対して慎重姿勢を強めます。なぜなら、貸出債権が焦げ付いた時、含み益を持つ保有債券の一部を売却して益出しをし、損失を穴埋めするための余力が無くなるからです。

もちろん、それが即、金融機関の不良債権問題を深刻化させることはないでしょう。記事でも「邦銀の多くは規制を大幅に上回る自己資本を蓄えている」ことを指摘しています。とはいえ、急ピッチに進む金利上昇は、金融機関の体力と融資能力を損なうという点で、これからしばらく注意が必要です。