なぜ金利が上がると債券は下がる? 

ただ、目先で大きな問題になりそうなのは、海外金利、とりわけ米国の金利上昇による影響でしょう。

記事にもありますが、「FRBは過去20年のデータに基づき、23年から24年にかけて短期金利が6%台に乗せるシナリオを示して」います。これを受けて、日銀が金融機関のストレステストを実施したところ、金融機関の外債運用の収益性低下が懸念されているのです。

恐らく、債券投資に馴染みのない人にとっては、「金利が上昇するのに、どうして外債運用の収益が低下するのか」という点が、理解できないのではないでしょうか。この点について少し説明しておきましょう。

債券という金融商品には額面価格があり、それに対して一定率の利子が支払われます。たとえば、額面価格が100円で、利率が1%の債券は、額面100円につき年1円の利子が支払われる計算になります。そして、この債券を償還まで保有した場合、毎年1円の利子が支払われ続け、償還日には額面価格である100円で元本も戻ってきます。これが債券を償還まで保有した場合の、基本的な仕組みです。

また、それと同時に債券は、「債券市場」で株式と同じように、不特定多数の投資家との間で売買できます。その際には株価のように債券価格という市場価格に基づいて売買されます。

この債券価格と利回りが、債券投資の収益性に影響を及ぼすのです。たとえば額面100円、利率1%の債券があり、今後、インフレ懸念の高まりで金利が上昇するかも知れないという見通しが、債券市場に広まった場合、利率1%の債券の価値は低下します。なぜなら、これから新規に発行される債券の利率は、1%よりも高くなると考えられるからです。

すると、この債券は債券市場で売られます。売られれば債券価格は下がります。額面価格が100円でも、99円、あるいは97円というように値下がりし、その債券価格で売買されるのです。

もし、額面100円、利率1%という債券の債券価格が99円まで下落したとしましょう。償還までの期間を5年として、99円で買った債券を償還まで保有すれば、1円の差益を取ることが出来ます。1年あたりの差益は20銭です。そして1年間に受け取れる利子は1円ですから、この債券を持つことで得られる1年あたりの収益は1.2円です。これを、購入した際の債券価格である99円で割ると、1.212%という利回りを算出できます。

つまり、債券価格が99円まで値下がりしたことで、利回りが1.212%まで上昇したことになります。これを逆に考えれば、先行きの金利上昇期待で債券利回りが上昇すると、債券価格は下落するという理屈が理解できるのではないでしょうか。