物価高騰や金利上昇が金融システムの安定性に悪影響
日本経済新聞の10月22日付朝刊に金融システムリポートの内容が掲載されました。金融システムリポートとは、日銀が金融システムの安定性を評価・検証するために、半年に1度の頻度で公表しているものです。今回は「全体として安定性を維持している」としながらも、原材料価格の高騰や海外の金利上昇を受けて、「ストレス局面は一段と長引く可能性がある」という見解を示しました。
特に注目されるのは、世界的に広まっているインフレ懸念でしょう。直接金融機関の経営に影響を及ぼすわけではありませんが、物価高に加えて円安が急激に進行しているため、大企業、中堅・中小企業を問わず、原材料を海外から輸入している日本企業は、資源高と輸入物価のダブルパンチを受けています。9月の企業物価指数は、前年同月比で9.7%上昇という、過去最高の上昇率を示しています。
一方、9月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で3.0%上昇しました。消費者物価指数の上昇率が3%台に達したのは、実に31年ぶりのことです。
問題は、企業は物価高を製品・サービス価格にまだ反映し切れていないことです。企業物価指数が、前年同月比で9.7%も上昇しているのに、消費者物価指数の上昇率が3.0%に止まっているのは、それだけ企業が資源・エネルギー、その他の原材料価格の高騰分を、製品・サービス価格に転嫁しないように、努力しているからです。
しかし、それでは企業収益を悪化させます。結果、金融機関の融資先企業の経営が悪化したり、破綻したりすれば、金融システムの安定性に悪影響を及ぼす恐れが高まります。そのため、リポートでは原材料価格の高騰を受けて、ストレス局面が長引く恐れがあることを指摘しているのです。