体に向き合っている今、毎日が楽しい!

たとえば、以前は家族で出かけてもみんなについていけないし、息切れするのもしんどくて、外出が億劫でした。家でテレビでも見ていたかった。ところが、今のぼくの下半身には太い筋肉がついています。歩いても、階段を上っても、そう簡単には疲れません。ちょっと外の空気を吸いたいなと思えば、瑤子さん(ぼくの奥さんです)を誘って気楽に散歩に出かけたりします。

外へ出れば、街路樹の葉の色で季節の移ろいを感じたり、コンクリートの裂け目に生える雑草の逞しさに目を見張ったり、賑やかなショッピングセンターで買い物をしたり……。目や耳にたくさんの刺激を浴びながら、外の世界と接することができます。家に閉じこもっているより、ずっと楽しい。

それに、外へ出られるようになったら、人との出会いも増えます。1年ほどまえから瑤子さんとぼくがフェイスブックを始めたのも、外へ出て、偶然会った若い人たちと話をしていて、おもろそうやな、と教えてもらった成果です。

今はほぼ毎日、フェイスブックに新しい写真をアップして楽しんでいます。新しいことを始めるのは、いくつになってもおもろいもんですな。

筋トレで体を鍛えていたら、歳がいっても好きなことができて、楽しいこともたくさん経験できます。心までハツラツ、ハレバレしてくるのです。

ぼくは90歳の健康な肉体に感謝状を贈りたい気持ちでいっぱいです。

自信満々、怖いものなしの毎日です

筋トレで得た筋肉は、ぼくに自信ももたらしました。

以前のぼくは老いさらばえた体を抱えて、車椅子になったら、寝たきりになったら、どないしよう、瑤子さんに先立たれてひとりぼっちになっても生きていけるんやろか……。夜中にふと目がさめたときなど、そんな不安におののいたものです。

当然、死への恐怖もありました。とくにぼくの場合、医者に「40歳までしか生きられない」と言われていたのです。若い頃からずっと80代に入っても、死の影に怯えつづけてきました。

ところが、今のぼくからは、寝たきり云々の不安も、死への恐怖もきれいさっぱり消えてしまったのです。筋トレで得た筋肉が、ぼくにとてつもない自信を与え、その結果、得体の知れない不安も具体的な恐怖も消滅してしまいました。

猫背で、ヨタヨタ歩いていた86歳の老人が、90歳の今、胸を張って背すじを伸ばし、大股の速足で歩いています。息切れもなくなり、肺がふたつ揃っている人に負けないだけの肺活量を誇っています。ほかにも、先ほど書いたようなたくさんのすごい変化が起きました。

昔ならとっくにあの世の住人なのに、このような変化がぼくの体に次々に起きて、今も進行中なのですから、自信かて生まれます。

ぼくは今、筋トレに忙しくて、その成果を喜ぶことにも忙しくて、筋肉痛に耐える、身もだえするような快感を味わうのにも忙しい……。そやから、考えても答えの出ない不安や恐怖に怯えているひまがないのかもしれません。

とにかく、この調子なら、自分の死ぬ日まで自分の脚で歩きつづけられるやろうし、毎日おいしくごはんを食べて、まわりを笑わせながら楽しくすごせるやろう、なによりも、100歳まで仕事を続けられるかもしれないし、続けたい、と本気で考えるようになりました。

筋肉は気持ちまで前向きにしてくれます。ぼくのまえにはまだまだ可能性が広がっているようにさえ思えてくるのですから、ノーテンキというか、図々しいというか……。

でも、この的外れかもしれない自信がぼくの毎日をハッピーにしてくれていることは間違いありません。

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『崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!』

大村崑著
発行所 青春出版社
定価 1400円+税