自分のお葬式はどんなものになるだろう

彩子さん(仮名、50歳)は金融関係のシステム会社に勤めるシステムエンジニア。新卒から同じ会社に勤めており、現在は40人の部下をまとめる管理職です。30歳のときに一度結婚しましたが、3年後に離婚して以来、おひとりさま。実家は3駅離れた隣町にあり、弟夫婦が母親と二世帯住宅で暮らしています。

仕事を終えて彩子さんがふとスマートフォンを見ると、大学時代の友人からの着信履歴が残っていました。折り返すと恩師が亡くなったという知らせでした。恩師とは年賀状のやりとりくらいしかしていませんでしたが、楽しかった大学時代を思い出し、彩子さんは自分でも意外なほど喪失感を覚えました。

最後にお別れがしたいと思いましたが、友人によると親族のみでお葬式をするため教え子の参列はできないとのことでした。コロナ禍でもあり、確かに教え子が押し寄せたらご家族も大変だろうから仕方ないよね、でも悲しい気持ちの持っていき場がないね、などと友人としばらく話し、再会を約束して電話を終えました。

帰宅すると、母親が別の用事で連絡してきました。彩子さんが恩師の話をしたところ、母親の知り合いも家族だけでお葬式をしたけれど故人には知り合いが多かったので、その後自宅を訪れる弔問客への対応が何度も必要になってしまい、結局大変だったらしいと聞きました。

そういえば、母親が亡くなったとして、誰にどうやってそのことを知らせたらいいのか彩子さんは知りません。いつか整理してもらわないと、と思いつつ、彩子さんの知り合いについても、弟や母親は何も知らないことに気づきました。急に自分が死んでしまったら、弟や母親は誰にも連絡できません。遺影も昔の家族写真から切り抜かれることになるでしょう。自分の人生の最期のイベントがそんなことでよいのだろうかと彩子さんは考え込んでしまいました。