債券価格が上がるとリターンの割合は下がる
債券は投資家同士でも売買可能だ。市場での取引価格は一般的に「債券価格」と呼ばれる。なお、債券を新規発行する際の価格は「発行価格」、満期になったときに受け取れる金額は「額面金額」と呼ぶ。
額面金額は常に一定だが、債券価格は需要と供給のバランスによって変動する。この需要を決める要因の一つが、債券の利率だ。
債券の利率は発行時の市場の金利水準や発行体の信用力などに応じて決定される。
市場金利とは、民間金融機関が企業や個人へ貸し付ける際の金利や金融機関同士の取引で使われる金利だ。たとえば、市場金利が高くなれば新たに発行される債券の利率の上昇が期待され、反対に市場金利が低下すれば債券の利率も下がるだろうと考えられる。
額面金額が同じで利率が高い債券が発行されれば、そちらに人気が集中しやすい。すると、利率の低い既発債は需要が減るため、債券価格が下落するのだ。
上記のような仕組みで、金利上昇局面では既発債の債券価格が下がりやすく、反対に下降局面では債券価格が上がる傾向にある。
なお、利率と混同されがちな用語として「利回り」が挙げられる。債券の利回りとは、購入時の価格に対する利益全体の割合を指す。ここでの利益には、利息に加えて償還される額面金額も含まれ、債券の利回りは下記の式で計算可能だ。
利回り={利率(%)+(額面金額 - 債券価格)÷ 残存年数}÷ 債券価格 × 100
たとえば、額面価格100円・利率2%・償還までの期間が5年間ある債券を額面価格と同じ100円で購入した場合、償還時の利回りは2%となる。
しかし、同じ条件の債券を90円で購入すると償還時の利回りは約4.4%に増加、105円で購入すると約0.95%に減少する。額面価格や利息の金額に変化はないため、初期コストである債券価格が低下すると利回りが上昇し、債券価格が上昇すると利回りは低下するというわけだ。
市場金利に影響を与える「政策金利」とは?
債券価格の変動要因に市場の金利水準が関係していることは前述の通りだが、市場の金利は政策金利による影響を大きく受ける。ニュースでも耳にする機会が多い政策金利について、個々で一度整理しておきたい。
政策金利とは中央銀行が民間の金融機関にお金を貸し付ける際の金利を指し、景気をコントロールする目的で設定する。
もし政策金利が引き上げられると、金融機関の資金調達コストが上がり、増加したコストは企業や個人への金利上昇という形で転嫁される。企業や個人は借入に消極的になり、事業拡大や投資性向が減衰。その影響を受けて景気は後退する。
反対に政策金利が引き下げられれば、企業や個人の借入コストも下がるため、設備投資や消費など経済活動が活発化する。景気が上昇する効果も期待できるだろう。
実際に、アメリカでは2020年にコロナ禍による景気後退を下支えするために大幅利下げが行われた。ただ、現在は景気上昇に伴うインフレ率を抑制するため、2022年3月より数回にわたって利上げが実施されている。