では国内回帰は日本の給与水準の割高感がなくなったから?

製造業の国内回帰は日本国内の給与水準の割高感が薄くなったからという意見もある。経済協力開発機構(OECD)が公表した世界の平均賃金データによると、2021年の平均賃金トップは米国、2位がルクセンブルグ、3位アイスランドと続いて、日本の平均賃金は3万9711ドルで24位だった。G7(日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・カナダ)の中で日本は最下位で、OECDの平均(5万1607ドル)より、日本は1万ドル以上も低い。平均賃金の推移を見ると、米国は1990年を1とした場合、20年は1.47。日本も同様に計算した場合、20年は1.04にとどまり、賃金が30年間でほとんど増えていないことが分かる。そうしたデータからも日本の給与水準の割高感が薄くなっているとも言える。今後、国内回帰・増強が進めば国内に新たな雇用が生まれ、プラスの影響が出てくる。有能な人材の取り合いになり、賃金水準が引きあがる可能性もある。一方、世界的に賃金が上がる中、賃金が上がらない(低い)日本に外国人労働者が集まらなくなる可能性もあり、人手不足が深刻化する可能性もあると言われている。

このように製造業の国内回帰・増強は複雑な要因が絡み合って生じていることが分かる。医療が高度化した現代で新型コロナのような世界的なパンデミックが長期化することなど3年前は誰も想定していなかった事態だろう。ロシアによるウクライナ侵攻も、2月に大規模な地上戦が始まる前は懐疑的な見方も多かった。国内をみても毎年のように大規模な水害が起こり災害リスクは高まるばかりだ。混沌とした時代のなかでも、製造業に関わる企業としては供給者責任を果たすためモノを作り、営利企業として売らなければならない。今後も政府の財政的な後押しもあり、製造業の国内回帰・国内工場の増強の流れは少なからず続くだろう。円安も輸出型企業にとってはプラスにはたらく。ただ、円安効果は一時的なものであり、その効果をグローバルで通じる競争力のある製品開発など企業の付加価値向上にいかに繋げられるかが大事ではないか。

また違った見方で考えれば、物価高に追いついていない日本の平均賃金をいかに上昇させ新たな雇用を生み出すのかも忘れてはならない。これら海外生産のリスク回避のためだけに、ただ国内回帰をするのでなく、国内回帰が日本経済を上向かせられるかを今後注視していく必要がある。

執筆/鎌田 正雄

合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた