円安の影響が国内回帰を促進させるのか

円安という面では国内企業にどう影響しているのだろうか。国内企業で時価総額トップであるトヨタ自動車の22年3月期の連結決算(国際会計基準)は、円安傾向も後押しし、営業利益が前期比36%増の2兆9956億円だった。6年ぶりに国内企業(トヨタ)の過去最高を更新した。8月4日には、23年3月期の連結純利益が従来予想(同21%減の2兆2600億円)から1000億円引き上げ、同17%減の2兆3600億円になりそうだと発表した。原材料の高騰が重荷となり、営業利益の見通しは据え置いたものの、円安はプラス要因としている。日産自動車も7月の22年度第1四半期決算会見で、22年度第2四半期以降は、原材料価格の上昇や半導体不足の課題があるものの、ドル高・円安は追い風と説明している。世界的な原材料の高騰や材料不足・新型コロナ影響による工場の稼働停止のマイナス要因がある一方、輸出型企業にとっては円安が利益を下支えしている。

ただ、円安が工場の国内回帰を促進させているかというと必ずしもそうとは言い切れない。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は同決算会見で「事業の計画を為替レートだけで変えることは考えていない」と言及。日本政策投資銀行のレポートでも「過去には円安に2―3年遅れて国内回帰が生じる傾向にある。今回も遅れて回帰が生じる可能性は考えられるが、今回の円安も先行きは修正されるとの見解も多くなっており、国内回帰の要因は長期化しないとみられる」と限定的な見方を示している。