若年層の金融教育はますます重要に

今回はレポートというよりも、解説記事であるコメンタリーを取り上げたいと思います。昨今、「金融教育」に対する関心度合いが高まってきていますが、子供の金融教育に関心のある方は、国際通貨研究所のIIMAコメンタリー「金融教育の経験から ― 『君も資本家になろう』」を一読したうえで、金融リテラシーを高めるにはどうすれば良いのかを考えてみるのも良いでしょう。

このコンメンタリーは、国際通貨研究所客員研究員の森純一氏によるものです。著者は昨年、大学での教職を終え、その体験から「若い人たちの投資マインドをどう高めるか」という視点から、このコンメンタリーを執筆しています。

若い人たちの投資マインドを高めることは大事なことです。理由は、以下のようにさまざまな側面から考えることができます。超高齢社会が進むなか、今の20代、30代が定年を迎えた時、多少、経済的に豊かな生活をしたいと思ったとしても、叶わない恐れがあります。なぜなら将来、年金を受け取る人口に対して、それを支える若い人の数が、圧倒的に少なくなると見られているからです。

日本の将来推計人口によると、今の30歳が65歳になる35年後、65歳以上の人口は3637万2000人。その一方、働いて稼ぎ、収入の一部を社会保険料として国に納め、高齢者に払われる公的年金の原資を負担している20~64歳の現役世代人口は、4563万4000人足らずになってしまうのです。これは簡単な割り算ですが、現役世代1.25人で、1人の高齢者を支えることになります。

したがって、現役世代の社会保障負担はこれから重くなる一方ですし、その現役世代が公的年金を受け取る時期には、支えてくれる現役世代の人口が少なくなるので、受け取れる年金の額は、現時点に比べても厳しくなる恐れがあります。

さらに現役世代にとって厳しいのは、所得がなかなか増えにくい状況にあることです。

国税庁が発表した民間給与実態統計調査によると、直近分である2020年の平均給与は433万円で、1995年の457万円で比較しても減っていますし、ここから劇的に平均給与が増えるということは、日本経済の状況から考えても、まずありえない話でしょう。収入が増えないなかで社会保障負担が重くなり、かつ自分が高齢者になった時、公的年金が十二分に受け取れないとなれば、あとは自助努力で資産を増やすしかありません。だからこそ、若いうちから投資マインドを高めることが必要だという理屈は、確かにそのとおりです。