景気減速への懸念でネット広告事業にも暗雲

アップルとマイクロソフトの決算では、社会経済のあおりを受ける供給面と、市場縮小という需要面の問題が浮き彫りになった。では、残るアマゾン、アルファベット、メタにはどのような課題があるのだろうか。

・アマゾン
売上高:約1212億ドル(前年比+7%)
純利益:-約20億ドル(前年比―)

アマゾンは出資したEV企業の株式評価損があり、2四半期連続となる最終赤字を計上した。評価損を受けない場合の営業利益でも約33億ドルと前年同期比からマイナス成長となっている。

売上高は市場予想を上回ったものの、2021年第4四半期決算から続く1桁台という伸び率は2017年以来の低水準だ。

売上高全体の約4割を占めるEコマース事業の売り上げは、3四半期連続のマイナス成長に。コロナ禍で一時的に拡大したネット通販の需要が大きく減退し始めているようだ。

一方で同社のクラウド事業である「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」は売上高が前年同期比約33%増と市場予想を上回る成長を維持した。マイクロソフトと同様に、企業成長の大きな推進力となっている。

・アルファベット
売上高:約697億ドル(前年比+13%)
純利益:約160億ドル(前年比-14%)

米グーグルの親会社アルファベットの決算は、売上高・純利益ともに市場予想に届かなかった。純利益は2四半期連続の減少に。主力のインターネット広告事業において、動画共有サービス「YouTube」の広告売上高が前年同期比で5%増と伸び率が過去最低を記録したことが業績の下押し要因となった。

アマゾンのEコマース事業と同様、「YouTube」もコロナ禍においてユーザー数を大幅に伸ばし、広告事業も躍進した。しかし、在宅需要が減退した現在においては事業成長が著しく鈍化している。

また、景気減速を見越した法人による広告支出の削減や、ドル高による収益の圧迫も業績の下押し要因となっていると考えられる。

一方でマイクロソフトやアマゾンと同様に、クラウド事業の柱である「Google Cloud」の売上高は前年同期比で約36%増と業績を牽引した。

・メタプラットフォームズ(旧フェイスブック)
売上高:約288億ドル(前年比-1%)
純利益:約67億ドル(前年比-36%)

フェイスブックから社名を変更したメタは、売上高・純利益ともに前年比でマイナスとなった。SNSサービスにおけるインターネット広告需要の減少などを受け、第2四半期において上場以来初の減収を記録している。

主力のSNS「Facebook」の月間アクティブユーザー数は、2022年6月末で前年同期比1%の増加となった。過去1年間における四半期末ごとの増加率は3〜7%程度で推移してきたことから成長の減速がうかがえる。アマゾンやアルファベットと同様、コロナ禍で増加したインターネットサービスの需要が徐々に縮小傾向にあることが、理由の一つだろう。

また、メタの場合、「iPhone」を展開するアップルがネット広告企業による個人情報の収集を強く制限したことも、減収要因になっているといえる。加えて、社名の由来にもなっている仮想空間「メタバース」サービス構築のための先行投資も利益を圧迫している。

このようにアマゾン、アルファベット、メタの3社においても事業分野によって業績の明暗が別れた。クラウド事業の好調は、前述したように供給面の課題が少ないことに加え、DX化を進めたい企業の潜在的な需要が未だ数多く存在する高成長分野であることが大きな要因だろう。

一方で、不振が目立ったネット広告は経済の動向に影響を受けやすい業態だ。米国では急激な金融引き締めでリセッション(景気後退)に突入するかどうかが、経済の重要なトピックとなっている。今後のプライバシー保護の流れも考慮すると、事業の持ち直しには時間がかかると見られる。