マーケットの影響を受けにくい私募REITは機関投資家の保有比率が高い

では、J-REITは、誰がどのくらい保有しているのでしょうか。J-REITの上場市場である東京証券取引所の調査結果をベースにしてARESが作成したデータによると、都市銀行と地方銀行を合わせた保有比率は5.3%です。金額ベースだと8206億円です。

これに対して私募REITのうち、地域金融機関と中央金融法人の保有比率合計が62.3%で、私募REIT全体の出資総額は2兆8163億円だから、両金融機関の保有金額を合計すると1兆7545億円になります。つまり都市銀行と地方銀行による不動産投資信託への投資は、J-REITではなく私募REITであることが分かります。

私募REITは上場されておらず、したがって決算における評価額は、不動産鑑定評価額を基準に算出されます。そのため、マーケットの影響を受けにくく、評価額が比較的安定しているため、都市銀行や地方銀行をはじめとする機関投資家にとっては、投資しやすい面があると考えられます。

以前は、「地方の金融法人の買いによって、4月以降のJ-REIT相場は上昇しやすくなる」などと言われたこともありますが、今後、都市銀行や地方銀行がJ-REITよりも私募REITへの投資に傾斜するとしたら、J-REITの価格形成に対する影響力は後退していくものと考えられます。

一方、J-REITの投資部門別保有状況を見ると、最大勢力は信託銀行の43.3%です。これに都市銀行と地方銀行を合わせた保有比率は48.6%と限りなく50%に近づくわけですが、この48.6%のうち「投資信託分」が占める比率は33.3%にもなります。これがどういう意味かというと、信託銀行、ならびに都市銀行と地方銀行の信託業務で受託している、投資信託の信託財産の占める割合を指します。

もう少し分かりやすく説明しましょう。

投資信託の中には、J-REITに分散投資する「REITファンド」があります。このREITファンドに組み入れられているJ-REITは、信託銀行や都市銀行、地方銀行の信託業務として保管されています。この額が5兆1811億円あり、全体に占める割合が33.3%になるという意味です。

ちなみに個人が保有しているJ-REITの保有金額は1兆1263億円で、保有比率は7.2%ですが、これは個人が直接、J-REITの個別銘柄に投資している分です。ただ、投資信託であるREITファンドの保有者は、大半が個人であると考えられます。投資信託分と個人が直接投資している分を合わせると、個人の保有金額は6兆3074億円にもなり、J-REIT市場全体に占める比率は40.5%にもなります。つまりJ-REITの価格形成においては、個人投資家の影響が極めて大きいことになります。

また、J-REITにおいては外国人投資家の比率も無視できません。保有金額にすると39兆52億円で、保有比率は25.1%です。