そこでポンジファンドは、Aさんに配当金を支払える20カ月の間に次の出資者を見つけます。これを繰り返すと、ポンジファンドには一時的に大きなお金が集まります。仮にAさんと同様の出資者を100人集めれば、ポンジファンドには1億円もの資金が集まるでしょう。配当を出し続ければ20カ月で枯渇するお金ですが、詐欺師であるポンジファンドが大金を出資者に返す理由はありません。

資金が集まったところで、ポンジファンドは「運用に失敗した」などと偽り、解散を図ります。集めた資金はポンジファンドから移し、あたかも運用の損失のために資金が失われたかのように見せかけ、出資者に「詐欺に遭った」ではなく「投資に失敗した」と思い込ませることが狙いです。

配当が続けば、初期の出資者であるAさんは資金を回収できるかもしれません。しかし、あとから加入した多くの出資者は被害を受けることになるでしょう。これがポンジスキームの典型的な手口です。

ポンジスキームの巧妙な点は、配当金をあえて支払うことで出資者が詐欺に気付きにくいところです。出資者が早期に解約を申し出ればポンジスキームは成り立ちませんが、期待通りの配当金を受け取った出資者が詐欺に気付くことは簡単ではありません。むしろ追加出資の可能性すらあるでしょう。さらにポンジスキームは規模が大きくなると一定の解約にも応じられるため、ますます正規のファンドと区別が難しくなる点も厄介なところです。

ポンジスキームに巻き込まれないためにも、ファンドの購入は銀行や証券会社といった正規の金融機関を使うようにしてください。また、もしも投資詐欺に遭った場合、金融庁の「金融サービス利用者相談室」や消費者庁の「消費者ホットライン」に相談しましょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。