10年国債とJ-REITの利回り差は3.36%で不動産投資信託の魅力は健在

同レポートでは、不動産投資信託の魅力として以下の3点を挙げています。

① 3%~4%程度の配当利回り
② インフレに強い資産
③ 為替変動リスクなし

現状、外国為替市場については米ドル/円で円安がどこまで進むのかが焦点なので、③については魅力と言えるかどうか分かりませんし、長期投資を前提にすれば、為替レートの値動きは比較的中立であるとも考えられます。

また、「不動産は実物資産なのでインフレに強い」という②の理屈も、人口減少と不動産ストックの積み上がりという点で考えれば、インフレリスクをヘッジして余りあるだけの値上がりが期待できる不動産は、かなり限定的です。

したがって、不動産投資信託の魅力は①がメインということになるのですが、この点において現在、上場されている61本の不動産投資信託の平均分配金利回りは、6月10日時点で3.62%あります。

10年国債の利回りは0.260%ですから、両者の利回り差であるスプレッドは3.36%です。通常、スプレッドが3%あれば、金融法人などは、リスクプレミアム分を考慮しても不動産投資信託に投資した方が有利、という判断を下す傾向があります。

昨今、欧米の中央銀行は、これまでの金融緩和局面から脱する方向に、金融政策の舵を切り始めていますが、日銀が金融引き締めに転じるには、まだかなり時間がかかりそうです。こうした金利見通しからすれば当面、スプレッドが大幅に縮小することはないと考えられます。

また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の抑制も、解消されつつあります。株式市場のセンチメントが回復すれば、不動産投資信託の投資意欲も、徐々に回復するでしょう。特に、今回の経済活動の抑制でダメージを受けたホテル、商業施設関連の不動産投資信託の取引価格が回復基調をたどれば、不動産投資信託市場のセンチメントは改善へと向かうはずです。

不動産投資信託は、短期的な値上がり益を狙う商品ではありません。長期で保有し、3~4%の利回りを安定的に享受し続けるところに、この商品の魅力があります。

対TOPIXの収益性も、配当なしで計算するとアンダーパフォームですが、配当込みで両者のパフォーマンスを比較すると、実は東証REIT指数のそれは、TOPIXを大きく上回ります。ちなみにTOPIX(配当あり)と東証REIT指数を共に2003年3月末を1000として指数化した場合、2022年5月末のTOPIX(配当あり)が3485.38ポイントであるのに対し、東証REIT指数は4563.32ポイントです。この両者の数字からも分かるように、不動産投資信託は長期保有して初めて商品価値が高まると考えられるのです。