保有株が上場廃止になったらどうする?

ところで、保有している株式が上場廃止となったらどうなるのでしょうか? レナウンのように上場廃止後に破綻した場合、せめて損失を申告し利益と相殺したいと考えるかもしれません。

しかし残念ながら上場廃止後の損失は申告できないケースがあり、レナウンもそうでした。ポイントは株式の価値が失われるまで保管振替機構(通称:ほふり)が継続して管理しているかどうかです。

少しややこしいので整理しましょう。まず前提として、株式を上場廃止まで保有していたということは売っていないわけですから、そもそも譲渡損が発生していません。

売っていなくても株式が無価値化したのなら実質的に損失といえそうですが、上場廃止というだけでは株式の価値はゼロになりません。上場していないだけで企業そのものは存続しているといったような場合、株式には一定の価値が認められるためです。

つまり単に上場廃止となっただけでは損失が発生したとは認められず、損失を申告できないのです。仮に相対取引(※)などで損失が確定したとしても、非上場株式と上場株式の損益通算は2016年以降廃止されたため、やはり基本的に損益通算できません(他の非上場株式などの譲渡益とは損益通算可能)。

※相対取引(あいたいとりひき):取引所を通さず当事者同士で行う取引

出所:国税庁 タックスアンサー No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い

その例外的な処置が「破産等により株式の価値が失われたときの特例(みなし譲渡損失の特例)」です。以下(ア)~(ウ)の条件を全て満たすと、上場廃止銘柄を購入した証券会社で「価値喪失株式に係る証明書」を発行でき、株価がゼロになったと見なして損失を申告することができます。

(ア)上場廃止銘柄を特定口座で保有していた
(イ)上場廃止時に「特定管理口座」を開設し、上場廃止銘柄を受け入れる
(ウ)「無価値化の事実」の発生まで保管振替機構が管理を継続している

この条件のうち、障害となりやすいのは(ウ)です。「無価値化の事実」とは破産手続きの開始など、その株式発行企業の価値が客観的に失われたと見なされる出来事を指します。

そして保管振替機構は株券電子化に伴い、株主の権利を一元的に管理している機関です。保管振替機構による管理がない場合、証券会社でもその株式を管理することはできません。

(ウ)の条件を難しくしているのは、保管振替機構は一定の条件に当てはまらない限り、上場廃止後すぐに管理をやめてしまうためです。上場廃止から無価値化の事実が確認できるまで期間が空くことは珍しくなく、レナウンにおいても同様でした。このためレナウンは「価値喪失株式に係る証明書」を発行する条件を満たせず、上場廃止まで保有していた株主は損失を申告することもできなかったのです。

このように上場廃止後の損失は申告できないケースが少なくありません。一般に上場廃止が決まると、取引所はその銘柄を「整理銘柄」に指定して注意喚起します。保有株が整理銘柄に指定された場合、取引所で売買できるうちに売ってしまうほうがいいかもしれません。