「頭金なし」で持ち家を住宅ローンで購入し、借り入れ負担が増加
高度経済成長で人口が増えていた日本においては、旺盛な住宅需要に対応して、戸建てや分譲マンションがたくさん建てられましたが、経済が安定期に入り、人口が減少すれば、これまで建てられた戸建てや分譲マンションが、膨大な住宅ストックと化していきます。
そういう時代に、数千万円もの住宅ローンを組んで新築物件を購入し、定年までかけて完済していくなどという、おおよそ昭和的な家の持ち方は、徐々に流行らなくなっていくのではないでしょうか。
前述したように、日本経済の成長や賃上げが期待できず、生活防衛意識がさらに強まるとしたら、高額な住宅ローンを組んで新築物件を買うのではなく、豊富な住宅ストックを安価に利活用することで、住宅にかかるコストを低減させる方向に舵を切っていく可能性が高まると思います。
また、このレポートの「2022年度調査 住宅ローン事情」の項目を見ていくと、現時点における住宅ローンの利用方法について、いくつか気になる点がありました。
まず、「頭金なし」で持ち家を購入している人が一定数いることです。住宅購入意欲が高まる30-39歳の場合、38.6%が頭金ゼロで購入しています。頭金がゼロということは、住宅購入にかかる資金を全額ローンで賄うことになりますから、これも当然のことですが借入負担は確実に重くなります。結果、月々の返済金額を大きくするか、もしくは返済期間を長期化するかのいずれかによって返済していくことになりますが、30-39歳の住宅ローンの返済設定期間は、他の世代に比べてかなり長期化していることが分かります。
ちなみに同レポートによると、30-39歳の返済設定期間は、25年以上35年未満が46.1%、35年以上が39.6%を占めました。両者を合わせると、85.7%が25年以上をかけて返済していることになります。
これに対して他の年齢層を見ると、返済設定期間が25年以上である比率は、20-29歳が44.2%、40-49歳が74.6%、50-59歳が54.7%、60-69歳が38.2%ですから、30-39歳は頭金ゼロで住宅を購入している反面、住宅ローンの返済負担が重くなっているのが分かります。
ちなみに住宅ローンの借入額ですが、全体の中央値が2345万円であるのに対し、30-39歳の借入額は、中央値で2798万円。これは他のどの年齢層よりも高い金額になっています。