極左武装派ゲリラから大統領に

ムヒカ氏が生まれたウルグアイは、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた南米の小国です。1960年代からの経済危機により、極左武装組織「ツパマロス」の活動が徐々に拡大していきます。貧困家庭に生まれたムヒカ氏は大学卒業後にツパマロスに加入し、ゲリラ活動を展開。ここで彼は後に妻となり、政治活動を共にするルシア・トポランスキーと出会います。

ムヒカ氏の生涯の活動理念は貧困の撲滅でした。ツパマロスの活動では、自ら銀行の襲撃や身代金目的の誘拐などを実行。そこで奪ったお金を貧しい人々に配っていたのです。

その後、ツパマロスの活動は徐々に過激化していき、ムヒカ氏は4度も逮捕されました。4度目の逮捕では1972年から1985年まで投獄され、軍部の拷問を受けるなど過酷な獄中生活を送ることになります。その間、ルシアも捕らえられ、2人は別々の独房で13年間を過ごしました。軍政の終焉とともに、ツパマロスのメンバーは釈放されました。

ムヒカ氏はルシアや他の仲間とともに銃を捨て、中道左派政党「拡大戦線」に合流し政治家としての道を歩むことになります。1995年の下院議員選挙で初当選後、2010年3月から2015年2月までウルグアイの大統領を務めました。ムヒカ氏が大統領に就任したとき、ルシアは上院議長。13年も刑務所にいた武装派ゲリラの夫婦が、大統領とファーストレディーになったのです。

2人はムヒカ氏の大統領就任後も官邸には住まず、郊外の農場で暮らし続けました。また、報酬の90%を寄付し、古いフォルクスワーゲン・ビートルを自ら運転するという質素な生活ぶりで有名になります。

ムヒカ氏は大統領在任中の5年間で自身のライフワークである貧困対策に取り組み、貧困率を39%から11%に改善するなどの成果を上げました。